第17話 人じゃないほうがいい

ダメージはデカかった。


まったく無駄口を叩かなくなった。


黙々と移動しては、ドアを開けたり、エサをぶちまけたりしていった。


けれど、乳牛を野原に開放して、親牛と仔牛が再会して喜びはしゃいでいるのを見たら、どうでも良くなった。どうでも良くなったというか、とにかく拘ってても仕方がねえと思った。


「ねえ、さっきの人、申請通るよね?」


そう聞くと、ハナさんはどこか力強く頷いた。


「高確率で通ります」

「そっか」


良かった。胸にようやく訪れた安心を噛み締めた。


昔から海外映画観てるとこんな状況でよく楽しめるなコイツ等、というシーンがある。なにやら不安なことあるのにパーティしたり、化け物近くにいるのにラブラブしたり。不思議に思っていたけど、あれが正しかったな、と今なら思う。要するに過去やら未来から来る不安やら恐れなんかに取り憑かれてんのは、確立された個人じゃねえってことだろう。


まぁ、それだってフィクションなんだろうけど。


今や、フィクションでなく、名実ともに「個」人なわけで、精々楽しくやろうや。幸い隣にハナさんがいるから、孤人じゃないさ。人じゃなくても、人っぽければいいんだ。むしろ、人じゃないほうが良いよね。優しくなれるし。


「ハナさん、さっきの女の子のところに戻れる?」

「戻れますが」

「じゃ、お願い」

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