第15話 鍵は友人キャラ 2
いきなりの誘いだったので、麗華には驚かれるだろうなとは思っていたが、まさか
それより先にメンバーの四人が反応するとは思わなかった。
確かに、時也がアンジェリカや美都弥以外の女の子を昼食に誘うことはないので、同じくクラスメイトとはいえ、予想外のことなのは間違いないだろう。
「? なんだよ、お前ら、そんなに驚いて。俺が三上と一緒にメシ食うの、そんなに意外だったか?」
「当然だ。ファンサービスと仕事以外では、従者と妹ばかり横に侍らせているお前が、まさかこんなにも堂々と誘うとは思わなかったのでな」
「トキ、どうしちゃったの? やっぱり、朝の激辛シュークリームのせい?」
「なんだよ時也、人のこと散々チャラいだのなんだのぬかしやがって、結局はテメエも同じじゃねえか」
「……時也、何を焦っている」
四人の反応は様々で、中には俺の行動を疑っているヤツもいそうだが、しかし、このぐらいやってでも、麗華のみが持っているであろう『攻略対象の主人公への好感度』の情報はやはり欲しい。
どのゲームにおいてもそうだが、特定のキャラを攻略したいと思う場合、頻繁に確認しておく必要がある。キャラの反応などで大まかに確認することもできるが、それもシナリオが中盤~終盤に差し掛かってのことなので、序盤のルート分岐に必要な好感度を確認するためには、より細かい情報を教えてくれる麗華の存在が貴重になってくるわけだ。
また、このゲームにはとても厄介な仕様が存在しており、例えば、
瑛斗の好感度:20
塁の好感度;20
と好感度の数字が同値で、またイベントの起こる場所と月日が同じだった場合、攻略難度の高いほうのシナリオが優先解放され、難度の低いほうはそのまま出現せず消えてしまう不具合が発生してしまうのだ。『どっちに行く?』という選択肢すら発生しない。発売後に判明して、それなりに界隈を賑わせたのが記憶に残っている。
学習合宿や体育祭、文化祭などの学校行事がそれに該当するが、ことごとくそれが必須イベントというのが辛い。
普通に特定のキャラを追いかけていれば、そういったことは滅多に発生しないものの、主人公の行動を完璧には操縦できない以上、想定外のことが起こりうる可能性もある。俺が好感度アップアイテムを主人公に渡さず、購買でも買い占めた理由はそれだ。
何度も言うが、俺は主人公とのフラグを絶対に回避して、できれば自分の最推しであるアンジェリカとくっ付きたい。確実にそうするための方法はまだわからないものの、その前の『主人公とくっつかない』という最低条件はクリアしなければ。
「ん~、時也君のお誘いってんなら、クラスメイトだし、いいモン食べれそうだし、別に構わないけど……でもさ、私なんか誘っちゃってもさ、その、いいわけ? 他の皆もそうだけど、ツイプリってアイドルでしょ? この学校にも大勢ファンもいるわけだし、その、ファンの子がざわざわしないかな?」
「ごもっともな心配だな。でも、大丈夫。俺たちは基本的に混乱防止で学食でも特別室が用意されてるし、それも気ぃ使っちゃうんって言うんなら、弁当用意するか、料理を運ばせるかで
「でも、それじゃあ他の皆もいるし、『あなた』だって……その、出来れば二人がいいんだよね? やっぱり」
「三上が嫌ってんなら、別に『あなた』さんと一緒でも構わないぜ、さすがに野郎どもと一緒ってのはゴメンだけどな」
俺が訊きたいのは『俺以外の四人の好感度』だから、別に『あなた』がいても問題ない。そのほうがもしかしたら『あなた』の行動をある程度操作できるかもしれないし、それに、俺の主人公に対する好感度は0で固定だ。
「麗華、五条さんもそう言っているし、OKしてみたら? それに私も、『学食の特別室』っていうのに興味あるし。それにさ、なんか、ものすごく美味しい料理が食べれそうじゃない? ……っと、考えただけでよだれが」
「『あなた』ってば、相変わらず色気より食い気なんだから……まあ、連れもこう言っていることだし、それじゃあ、今日のところは一緒させてもらっていい?」
「おう。じゃ、三人だな」
主人公が助け舟を出してくれたのはちょっと意外だったが、そのおかげで三上との約束は取り付けることができた。
俺がそれでなびくことは絶対にないが、他のキャラとの恋は絶対に成立させてやるから、そっちのほうでぜひ頑張って欲しいと思う。
「さて、と。んじゃ、とりあえず特別室使うから手配よろしくって、先に瞳ちゃんに頼んどくか……んだよ、塁。そんなむくれた顔で俺のこと見てよ」
「だって、今日は一人でご飯食べなきゃいけないから、寂しいなって思って。おかず交換もできないし」
「激辛からしシュークリームをノリノリで作ってきたヤツの弁当のことなら、今日はもう遠慮しとくよ」
「ぶ~、トキのケチ」
「はは。寂しいなら美都弥とアンぐらいなら貸してやるから、それで我慢してくれ」
「今回は部活の皆と食べるからいいよ。二人が嫌いなわけじゃないけど、やっぱり気は使っちゃうからね。トキ、きちんとアンちゃんにもこのこと報告しておくんだよ?」
「わかってるよ」
いつもは塁と一緒なので悪い気もするが、俺の将来のため、今日のところは許して欲しい。
好感度システム、プレイヤー時代は助かってよかったが、こうしてこの世界に入ると、厄介なものを作ってくれたな、とつくづく思う俺だった。
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