第10話 たまごのなかみ
「たまご……」
わたしが呆然と繰り返すと、赤ら顔のボルゲスはウヒヒと笑った。
「わたしもねぇ、あなたがかわいいっ! そのルックスッ、そのスキルッ、そして、その美しい羽っ! ああ……商人にとってあなたは、1000年にひとりの
グフフッグフフフッとボルゲスは喉を鳴らすと、ゲボゲボむせ返って、白いハンカチで口を
「失礼失礼……何も知らないあなたのために、
ボルゲスが
「カーベルさんは、採掘した大量の金を元手に地位とコネとを築き、一代で大商人にまでのしあがったわけですが──では、問題です。その
「あの……」
「ブブー、時間切れです、ざあんねん! 正解は、
わたしは反射的に、カーベルを〈審美眼〉で見た。
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カーベル・クレマン Lv.100 HP34000/34000
スキル: リスト表示不可。スキル数が500件を超えています。
スキル検索: 〈交雑〉=異種族間の子を成し、新しい種族を生み出すことができる。ただし、単為生殖する種族は、その限りではない。
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「見えましたか?
──にんげん、の……?
鉱山王は、指先で
「中級モンスターの中でも、オークの体力や粘り強さはピカイチだ。しかも、子供はどんどん産まれる。あとは人間の社会性と学習能力、そして従順さを持たせれば、危険な鉱山でも働き手に困ることはない。狙い通り、ハーフ・オークは人間のように家を建て、荒地を耕し、井戸を掘るようになったのだ。しゃべれはしないが、道具の使い方は身ぶり手ぶりで教えることもできた」
さらに、とボルゲスが得意げに付け加えた。
「彼らは、自ら
「しょく……りょう……?」
「ええ、ハーフ・オークはよく増えるので、適当に
──
小さなハーフ・オークの、無邪気な声。
わたしは食卓を飛びのいて、部屋の隅にうずくまった。
「ううっ……」
「あ、そんなところに吐かないでくださいよ、ああっ……まったく! 申し訳ない!」
ボルゲスは、はねるように席から立ちあがって、鉱山王に謝罪する。
そして、わたしを見下ろしながら、芝居がかった調子で続けた。
「いやはや……あなたは、そうやって
わたしは、這いつくばったまま、ボルゲスをにらみつけた。
「ゆるさない……そんなこと……」
「許す? あなたに許してもらうことなど、何もありませんが? 我々の契約は、もう成立している。ハーフ・フェアリーの調達に成功したあかつきには、鉱山王とわたしとで、新しいビジネスをはじめるんですよ。いわゆる、
──今夜のうちに、卵を用意していただきますよぉ。
鼻の穴を広げたボルゲスの顔が、魚眼レンズで映したように、歪んで見えた──
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