第32話 邪魔者
「今日はどこに行こうか」
「アダハ森林でいいのでは?」
「えー。オークキモいからヤダー。あいつらいっつも私見てブヒブヒ言うじゃん」
「……」
「あなたみたいなペッタンコは別に見られてないのでは」
「は!?リーゼぇ!あんた今なんつったの!?」
「いえ、私としたことが。いくら事実だからといって、アニカさんの胸部が可愛らしいだなんて。すみません。本当のことを言って」
「あ、あんたねえ!謝る気なんて髪の毛先ほどもないじゃない!完っ全にバカにしてるわよ!それに!リーゼだって言うほどないじゃない!」
「私は着痩せしてるだけです」
「どうだか!どうせその服だって厚着してるくせに!というか!私成長期だし!これから成長するし!」
「未来のことより現実を見ては?」
「っ!……ああもう!なんなの!?」
「まあまあ。そんなに怒らないで。俺はそのままのアニカがかわいいと思うよ」
「……ふん」
「リーゼも。あんまり煽らないで。君は頭がいいんだから。いつも頼りにしてるよ」
「……ありがとうございます」
「……」
姦しく賑々しい様子で歩いてくる彼らは4人組のパーティのようだ。
剣士の男、槍使いと神官っぽい女がいて、一番後ろを歩いてる魔法使いらしき人はフードを深く被っていてよくわからない。
男はおそらくリーダーだろう。集団の真ん中にいるし。顔が整ってる。髪が赤い。自信が現れながらも、口元が少し緩んでいて安心感を与えるような雰囲気がある。
槍を持った女の子はアニカと呼ばれていて、男の右側をくっついている。勝ち気な性格のようだ。神官に噛み付いてる様子で、声が大きい。
神官の法衣を纏った女の子はリーゼだったか、アニカの反対、男の左隣に寄り添っている。首にペンダントをつけてる。目がきつく、よくアニカに毒を吐いていた。
魔法使いはよくわからないが、なんとなく男ではない、ような気がした。前を行く3人の少し後をオドオドした様子で追いかけている。両手には杖を握りしめていた。
彼らの見た目は若い。
というか、ほとんど自分と変わらないぐらいじゃないか?
リーダーの男は仲間の口喧嘩を仲裁しながらもこちらに向かってきて、ルインさんを見つけると、表情を明るくして近づいて来た。
「ルインさん!」
「ライト君。他のみんなも、おはよう。今日も元気だね」
「はい!ルインさん達も、これから冒険ですか?」
「いや、本当ならそうしようかと思ったんだけどね。今回はギルドからの指名依頼があるらしいから、それを聞きに来たんだ」
「そうですか…。なら、その後に時間が空いてたら、また一緒に狩りにいきませんか?」
「依頼にもよるけど、時間が合うなら。それもいいかもね」
彼らは駆け上がる狩人と知り合いのようだった。
新人冒険者パーティと、気の良い先輩冒険者達といった、何処にでもありそうな風景だ。
和気藹々と話し続ける彼らに割り込むなんて気が起きるはずもなく。
レンはナックの後ろに隠れるようにして影を薄くしていた。
き、気まずい。
知り合いと他人が仲良く会話している時って何でこんなに気まずいんだろう。
ちょっと仲良くなったと思ったらそれよりも親しい人が出てきて、勝手に盛り上がり始める。いなくなってもいいかわからないし、それを聞くのも邪魔してるようで躊躇われる。
八方塞がりだ。
空気と一体になれるよう身を潜めてると、ルインさんが俺を見た。
「レン君。来てもらっていいかい」
前に出ると、ルインさんが口を開いた。
「ここにいる彼らは『炎華の芽』といってね。
4人でパーティを組んでいる。
事情があってね。ほんの一時期だけ面倒を見てたことがあるんだ。でももう、その必要がないくらいに強くなってる。
ライト君。彼はレン君と言ってね。ソロで冒険者をやってる。2年くらい前に少しあってね。その時に知り合いになったんだ。
年も近いだろうし、せっかくだから知り合いになっておくのも悪くないんじゃないかな」
紹介が終わると、沈黙が間に挟まって、ライトが声を掛けてきた。
「俺はライトだ。Cランクパーティ『炎華の芽』のリーダーをやってる。…よろしく」
ランクを言えと?
「…レンです。えっと…Dランクの冒険者をやってます。こちらこそよろしく」
ランクを言うと彼は完全に興味を無くしたようで、他のメンバーは何も言う事が無かった。
俺にどうしろというんだ。
もう抜けていいかな。ルインさん達も苦笑いしているし。このままここにいた所で邪魔者以外の何者でもないだろう。
「じゃ、じゃあ。俺そろそろいきます」
頭を下げてすぐに去ろうとしたら、なぜか皆が驚いた表情である一点を見つめていた。
今度は何なんだよもう。
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