第12話 ポーター

 Fランクになるとできることがいくつかある。

 その中でも特に大きいものが一つ


 ポーター


 いわゆる荷物運びというやつだ


 冒険者として活動する際、荷物というものはどうしても必要になる。しかし、その全てが戦闘において使われるわけじゃない。持っていく食糧、集めた素材、日を跨ぐなら野営道具など、邪魔になるだけである。そういったものを運ぶ為にポーターがいる。


 翻ってポーターの利点とは何か


 まずは安全。基本的にポーターは戦わない。荷物を運ぶだけだ。だから周りから守られる。

 そして、ポーターを雇うほどの実力があるパーティ(冒険者稼業において一緒に活動する集団)などは、長く続けてきただけあって生存能力が高い傾向にある。


 次に指導。まだまだひよっこのFランクにおいて、先達から学ぶことは多い。チームでの連携やちょっとした小技こわざなど、実際に見て学ぶことができる。そしてポーターを雇った側は、先輩として余裕があるときはポーターの面倒を見る、といった約束事、というか慣習がある。


 そしてスカウト。これは雇う側にとってもメリットになる。真面目に仕事をこなし、相性が良く、将来性が高いと思われればそのままパーティに組み込まれることもある。周りのレベルが高ければ自然と自分を引っ張ってもらえるのは利点だ。


 たまに、十人分の荷物を持ち、索敵や剥ぎ取り、料理、テント設営、見張り、援護など、なんかもう至れり尽くせりなポーターもいるらしいが、まあ、稀だ。そいつソロでもいいだろ。なんでポーターなんかやってんだ。



 ポーターになるには受付での登録が必要で、雇い主が依頼を出したときに受付が相性が良さそうなポーターを紹介する、といった感じだ。

 一応は面接もするらしいが、大体は契約条件の確認くらいらしい。

 ちなみに契約は冒険者ギルドによって保証されるので面倒な事にはなりにくい。


 と、いったことをハイマンさんは丁寧に教えてくれた。やっぱ良い人だろ、あの人。それか教えるのが好き、みたいな感じなのか。


 ポーターとして声が掛かるのを待ちながら、レッサーゴブリンを狩る新しい生活が始まった。



「ぜぇ……はぁ……ぜぇ……はぁ……」



「おーい。ポーター遅れてっぞー」



「ぜぇ……!はぁ……!ぜぇ……!ぁ……!」



「おーし。それじゃあペース上げっからなー」



「…?……!ぁ……、……っ!………」



 やばい。


 ポーターやばい。


 ポーター舐めてました。


 ごめんなさい。


 もう、許して…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る