第7話 ホルモン工場

 印鑰は、美貌を誇る妻の智子を狙った刑事の松平により、無実の罪を被せられた。

 出所した印鑰は、合田在助が経営する閑古鳥の鳴くホルモン工場で働く。印鑰は在助から、智子が松平にいたぶられ、砒素を呑んで自殺したこと、そして娘の璃子が松平に軟禁されていて、彼の欲望が璃子に向かっていることを聞かされる。印鑰は復讐を誓い、在助が大切に保管していた包丁をを受け取った。


 洞窟に軟禁されていた璃子を印鑰は助け出した。

 ロープで全身をぐるぐる巻きにされ、口に猿轡を嵌められていた。

 璃子は痩せ細り、寒い寒いと震えていた。


 印鑰は海馬沢が開発した抗コロナ薬がペテンだと見抜いたことで、海馬沢から命を狙われる。海馬沢は銃を突きつけ、秘密を隠す代わりに売り上げの半分を寄越すよう印鑰を脅す。

 一方、騎手の鱗川の身の上に同情した合田在助が、彼を引き取ろうと心に決める。顔が焼け爛れてる鱗川は、ゾンビと馬鹿にされ続けてライバルを殴ってムショ送りになった。

 

 璃子との結婚を目論む松平がホルモン工場へ訪れる。印鑰は松平の喉をナイフで掻き切って殺そうとするが、足が痺れて動けなくなり松平に逃げられ、璃子も再び拐われる。復讐に失敗した印鑰は、いつか仇を討つ日を思いつつ、顧客を次々に殺すことを怒りの捌け口とし、合田在助は犠牲者の腸や胃を売り捌くようになる。


 太は金を得るために印鑰から依頼され、璃子の行方を追うが、盗聴器で計画を知った松平は彼女を精神病院送りにしてしまう。


 人のホルモンで大繁盛した合田在助は、引き取った鱗川と、印鑰との3人で海外で暮らす夢を歌い上げるが、印鑰は気乗りしない。

「コロナが落ち着くとは思えない」

「海外より宇宙の方が安全だろうな」

 鱗川が鼻で笑いながら言った。

 工場の周りには、汚らしい身なりの女性がうろつくようになり、合田在助は、休憩室でコーヒーを飲んでる印鑰を応接間に呼び出した。

「白髪がボサボサで汚らわしい。死んだ客の遺族かも知れない」

 合田在助はブルブル震えていた。

 在助は黄金のシグネットリングを撫でていた。イニシャルを彫り込んで、認印として使用できる指輪だ。合田のGが刻まれている。コイツを北斗遺跡の奥で見つけたときから、合田はどんな罪でも逃れることが出来るようになった。

 標高は20m前後で、範囲は東西2,500m・南北500m。縄文・続縄文時代の浅い円形・楕円形竪穴102軒と、擦文時代の四角形竪穴232軒が、窪んだまま残されている。1952年に簡易軌道敷設に伴う土取り工事によって発見された。その後1970年には釧路市教育委員会が分布調査し、窪んだ竪穴住居跡386軒が見つかったのである。これまでに旧石器時代の火を焚いた跡、縄文時代の住居跡・墓や小貝塚、擦文時代の住居跡などが確認され、特に擦文時代の鉄器、繊維遺物、はた織具の一部、栽培植物の種子などが確認されている。さらには、1972年から73年にかけ、遺跡の地形測量と1部の試掘調査が行われると、長さ2.5kmの範囲に、遺構密集地点が9箇所見つかっている。先縄文時代最終段階に属する細石刃文化から、縄文時代早期の東釧路下層様式、前期の綱文土器様式、中期の北筒様式、後期末から晩期初頭の土器、続縄文土器及び擦文式土器の時期などあらゆる時代の遺構・遺物が見つかっており、その中には近世アイヌの遺物もある。釧路市北斗には現在、「史跡北斗遺跡展示館」が存在する。


 釧路湿原西側(釧路市湿原展望台の南側)にあり、釧路湿原を望む高台に縄文・続縄文時代のものとともに擦文時代の住居跡が検出されており、そのうち6棟が復元されている。また、釧路湿原展望台へ至る道道53号から少々入ったところに史跡北斗遺跡展示館があり、住居の模型とともに続縄文・擦文時代の解説や出土品の展示があるほか、ここから木道伝いに復元住居(「擦文の村」)へ行くことができる。復元住居は湿原遊歩道(鶴井軌道跡)からも近く、また釧路市湿原展望台とも木道で結ばれている。

 

 女のUネックの白いシャツは薄汚れていた。

 対する印鑰はVネックの黒いシャツを着ていたが、アイロンをしっかりかけてある。

「くたばれよ!」

 印鑰は塩を女に投げた。

 9月はあっという間に過ぎた。


 2021年10月4日 - 菅義偉内閣が総辞職。第205臨時国会が召集され、内閣総理大臣指名選挙を実施。自民党総裁の岸田文雄が第100代内閣総理大臣に選ばれ、岸田内閣が発足した。


 10月5日 - アメリカ・プリンストン大学上席研究員の真鍋淑郎(アメリカ国籍)が気候変動モデルの研究で評価され、ノーベル物理学賞を受賞。日本出身者の同賞受賞は2015年以来6年ぶりで12人目。


 10月7日 - 午後10時41分頃、千葉県北西部を震源とするM5.9の地震が発生。埼玉県川口市、同県宮代町、東京都足立区で最大震度5強、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県の広い範囲で震度5弱を観測した。この地震による重軽傷者は40人以上にのぼっている。なお、東京都で震度5強を観測したのは2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)以来10年ぶりである。また、2005年には千葉県北西部地震(M6.0)が発生しており、今回の地震と規模、震源地、深さの類似点が見られるが、関係性は不明としている。

 

 10月15日

 合田は朝から愛人とソファで乳繰っていた。たわわに実った乳房を揉みしだいていると、固定電話が鳴り出した。トゥルルル♪トゥルルル♪

 受話器を耳に当て、「はい、合田ですが」と名乗った。

《檜垣です》

 太から璃子の居場所を突き止めたと知らされた。

 寂れた温泉宿、クスリ屋だ。

 9月末、印鑰はクスリ屋で海馬沢に銃で脅されたが、間に太が入ってくれたお陰で助かった。海馬沢はロシア製拳銃マカロフで脅してきた。黒い銃口が冥界に続く穴みたいに思えた。引き戸が開いて、「そこまでだ!」と太がスーパーヒーローみたいに入って来た。海馬沢は衝動的に引き金を引いた。

 太は腹の辺りを撃たれて仰向けに床に倒れた。

 背中を撃ってあの世に送ろうとしてる海馬沢は、マカロフが手から消え失せて忽然としていた。

 印鑰はマジックみたかったなぁ?と、回想した。

 マカロフを奪った太はパンッ!パンッ!と、撃って海馬沢を射殺した。心臓と頭を撃たれて海馬沢は死んだ。💀

 目々澤寧・目々澤桃子・郡司源・海馬沢・遊佐陽一……5人殺したから、残り7人殺せばいい計算になる。

 

 印鑰は太に番頭を装って彼女を助けるよう助言する。その後、印鑰は松平へ手紙を出し、太と璃子の駆け落ち計画をだしにして彼を誘き出す。


 印鑰を疑い始めた鱗川は、自分が合田を守ると申し出るが、彼が海馬沢のスマホを使っていたことで狼狽する。鱗川は一時期、クスリ屋でバイトをしていた。皿洗いとか風呂掃除などが仕事なのだが、派手な銀のカバーで同じだったので驚いた。海馬沢には青森に住む元妻や、麻雀仲間などがいたがメールをすることで生きてるかのように見せかけた。


 警官のだんが工場に現れ、近所の住民が店の煙突から異臭がすると訴えていることを伝える。印鑰がラーメン屋のクーポン券をやると工場内へ招き、そのまま彼を斧で殴り殺す。

 印鑰は手作りの回転椅子と仕掛け扉で、彼の遺体を地下にある厨房へ落とすが、そこにいた鱗川は、印鑰が殺した人間のホルモンが使われていたことを知ってしまう。


 同じ頃、クスリ屋から璃子を救出した太は、彼女を工場に連れて行き、自分が帰るまでここにいるよう言い含める。その後、工場の周りをうろついていた女性が、団を追って工場に現れ、璃子は事務所の天井裏に隠れる。女性は印鑰を認めて何か話そうとするが、印鑰は早業で彼女を殺し、仕掛け扉から地下へ遺体を落とす。


 直後、松平が再び工場に訪れる。松平が印鑰の話から、彼の正体が風嵐だったと知ったところで、印鑰は何回も包丁で切りつけて松平を殺害し、遺体を地下へ落とす。璃子は様子を伺うため天井裏から顔を出し、印鑰の手にかけられそうになるが、合田在助の悲鳴が彼女を助ける。

 

 悲鳴を聞いて地下に向かった印鑰は、先ほど殺した女性が、死んだと聞かされていた妻、智子であることに気付く。智子は身を守るために老婆に変装していたのだった。合田在助の嘘に激怒した印鑰は、警察に出頭すると見せかけて彼を隠し持っていた銃で撃ち殺し、妻の亡骸を腕に抱く。

「智子ォッ!!」

 そこへ馬酔木を連れて太が戻って来る。 

 馬酔木はK2、太はマカロフをそれぞれ携行していた。

 眉間に釘が突き刺さった老婆の遺体を見て、馬酔木は吐きそうになっている。釘は血で赤黒く変色している。

「智子、痛かったろ……」

「うっ、鱗川はどこに行きやがった?」

 馬酔木が太に尋ねた。

「さぁ?どこかに隠れてるんじゃ?」

 太はマカロフの銃口を馬酔木に向けている。意表を突いて、印鑰の動きを封じるのが狙いだ。

 太はそれにしても、印鑰がナポレオンコートを着てるなんて暑くないのかな?まだ10月だぞ?と、思っていた。場違いなことを考えてるのは、幽霊だから死ぬことはないと自負してるからだ。多めのボタンや飾り紐の装飾、立襟などが特徴的だ。対する太は和服(番頭に扮してるので)、馬酔木はアウターはトレンチ・ジャック、ボトムスはパイレーツ・パンツだ。太もも部分はゆとりがあって膨らみ、膝下は絞られた細身のシルエット。

「おい、敵は俺だぞ?」と、印鑰。

 太はここに来る前、馬酔木から印鑰の正体が風嵐であることを聞かされていた。


 🔖印鑰殺害方法 ナイフで刺殺・斧で惨殺、釘で刺殺

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