第9話 番外編 桜タイフーン
桜の木の下で再会した
24年の時間を埋めるように香月と沙羅の幸せタイフーンが吹き荒れる・・・予感♡
香月の愛車は真っ赤なボディのkawasakiZEPHYR 750。
大学4回生の時に車体とカスタマイズにバイトの貯金を
手入れが行き届いていて今も大切に乗っていることは沙羅にもわかる。
庭でバイクの横にしゃがみこんで、顔に機械油をつけながら愛車を磨いている姿を想像してクスッと笑った時、目の前に青いヘルメットがグイッと差し出された。
「沙羅さん、メット被ったら顎の下でベルトをとめてね」
「あ、はい。えっ・・・・・・と」
「とめてあげる、顎上げて・・・っと、ヤッバぁ〜」
「?・・・ヤバ?」
「首筋、白~っ!」
「・・・/// っ・・・!!」
「本格的に俺がヤバくなる前に行こう」
「ヤバくなの?・・・・・・わからない」
「沙羅さんは知らなくていいんだよ。いや、それも困るかな ────」
「ますますわからないわ・・・」
首を捻った沙羅が可愛くて仕方がないが、今はワンピース姿の沙羅にバイクを
跨ぐ・・・跨ぐ?俺より先に
無実の愛車に明確な敵意を向けている自分に呆れつつ、香月は周囲に人がいないのを確認してから両手で沙羅の腰を両手で掴んで抱き上げた。
「うわっ!何コレ軽っ!腰、ほっそー!!」
「・・・えっ、えっ〜〜?///」
「沙羅さん、バイクを跨いで」
「はっ、はいっ」
ふわりとワンピースの裾が広がりそうになって慌ててタンデムシートにそっと降ろす。
「横座りは交通違反だからシワになるけどスカートを折り込んで足が出ないようにね」
「そ、そうね」
「次のツーリングはパンツにしようね」
そう言いながらうっかり沙羅のほっそりしたジーンズ姿を想像しちゃったもんだから、正直すぎる我が下半身の機敏な反応に苦笑いしつつ眉間に力を入れて、今は耐える。
「どうしたの?」
「・・・般若心経を唱えて・・・堪えてる」
「???信心深いのね」
「・・・そ、、かな?(神様仏様、ごめんなさい)」
大型バイクに高身長、美形の二人。
とてつもなく目立つ。
沙羅がスカートを折り込んできっちり座ったのを確認した香月は、スマホを取りだし実家のアドレスを探し出すと受話器マークをタップした。
『はい、香月です』
「母さん、俺だ、オレオレ」
『 ・・・・・・ 』
「ちょっと母さん?」
『今どきワンパターンのオレオレ詐欺なんて流行らないわよ。じゃぁね、
「まっ!待ったァ!」
『バッカね~、冗談よ冗〜談。オレオレのムスコ陽司、どうしたの?』
「オレオレ詐欺で遊ぶなよ、おふくろ」
『生意気言ってんじゃないわよ、告って振られたくせに』
「へへん、その高嶺の綺麗な綺麗な花に会って欲しいんだ」
『あら、まぁ、、陽司アンタ意外とやるわね』
「会って驚くなよ」
『万一、母さんの美的予想ラインを上回ったら。A5ランク神戸牛のステーキを賭けてもいいわよ』
「警察官相手に賭け事すんな・・・」
『ったく、遊び心のないツマンナイ息子ね。お父さんと加奈子も夕方には帰ってくるけど、いいの?』
「丁度いい。じゃな、おふくろ」
あっけにとられた顔でやり取りを聞いていた沙羅は、タンデムシートにちょこんと座っていたが、
「お母様?」
「そ。ね、沙羅さん。改めてお願いです。俺の家族に会ってください」
大きな身体を二つに折ってバイク上の沙羅に深く頭を下げる。
通りゆく人達が微笑ましそうに過ぎてゆく。
「わ、分かりました、から。お願い、頭を上げて」
「俺、強引だけど真剣だから。信じてくれる?」
目と目がぶつかって沙羅は真っ赤に頬を染める。
あぁ桜色だ、綺麗だなぁと
「信じます・・・陽司、くんを」
「ありがとう!」
抱きしめたいのを我慢して香月はヘルメットを被り、エンジンをかけた。
心地よい重低音、はじめてのバイクに手の置き場がなくてあたふたする沙羅。
香月の知るENDLESS RAINでのスーパー経営者とは真逆のたどたどしさ、可愛らしさに全身が泡だってブルっと震える。
「行くよ沙羅さん。俺の腰に腕を回してしがみついて」
「し・・・!しがみつく!?」
「飛ばすよ!いやぁ、ずっとしがみつかれていたいからゆっくり行こうかな?」
「 ////// !!!」
可愛い、めちゃくちゃ可愛い!
何なんだこの清純さ!
この人本来の可愛らしさを他の奴に知られていなくて本当に良かった。
沙羅がおずおずと香月の背から腹に手を回す。
その手をきゅっと握って俺の腹に押し付けると背後の沙羅がビクッと震える。
あぁ、本当にたまらないよ・・・・・・。
途中のインター近くにあるキラッキラしたとこで2時間休憩しちゃおっかなぁ。
って!バカかっ!
そんな陳腐な所は絶対ダメだ!
でも背中にくっついた温かさに理性の限界を告げる鐘が鳴る鳴る・・・。
大馬鹿者!やっと会えたのに嫌われるじゃん、、それは断じて困る!
とまぁ、悶々悶々自問自答。
「・・・どこかで休憩するの?」
「えっっっ!俺、何か言ってた?!」
「2時間がなんとか、鐘が鳴るとか何とか・・・?」
サイアクゥ💧口から出てた?
「あの、、陽司くん大丈夫?」
「へ、平気!平気!」
「フフフ・・・」
「えっ💦沙羅さん、、どしたの?」
沙羅は香月の背中に頬をつけて、囁く。
「平気、平気、いい子・・・ね」
!!!!!
この人が好きだ。大好きだ。
早く顔を見たいから、やっぱ早く帰ろう。
「沙羅さん、行くよ」
「・・・あの・・・沙羅、って呼んでも・・・」
滑り出したバイクのエンジン音に混じる甘い声。
桜の花びらが渦巻きながらバイクを追いかける。
首都高速湾岸線は春の陽射しに溢れている。
桜タイフーン
end
次話は番外編「カヅキ's ファミリー」です。
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