第7話 憎しみの矛先
城門前には近衛隊、守備隊、先行隊およそ100人はいるであろう軍隊が、王族や貴族を取り囲むように佇んでいる。
俺はこの宮殿の王達から魔王の討伐を頼まれた。答え合わせの時間だ。
「おい!!そこの王族ども!!余計な口を開かず問いに答えろ!」
「何だ貴様っ!!王に対して失礼である…」
〔散れ〕
『「「!!!???」」』
先行隊であろうその者は一瞬で消え去った。
「無駄な口は開くなと言ったはずだ!!次余計な口を開けばいまのように跡形もなく消すぞ!!わかったか?!!」
宮殿城門前の誰一人言葉を出さず、およそ100人は黙って頷く。
「な、なんだ?今のは…?」
「い、いまのって…龍一くん…??」
『はっはっはっはっ!!さすが我がライバルよ!!そんなことまで出来るのか!!』
「後で話す。さて、そこの王達よ!!俺を憶えているか?!そして俺の隣のコイツを憶えているか?!」
俺は怒りを殺し、なるべく平静を保って質問した。
少しの沈黙の後、群衆を掻き分け前に出てきた者がいた。
王だ。
あの魔王討伐の依頼を直接俺に頼んだ王だ。
「勇者様、よくぞご無事でございました。心よりお喜び申します。隣の方は…私は存じ上げませんが…」
「そうか。俺を憶えていたか。なら、次の質問だ。俺を殺したのは誰だ?」
「こ、殺す!!?どういう事でしょう?あなたは現にここに生きてらっしゃるのでは?!」
「…王よ、魔王の顔を知ってるか?」
「面目御座いません、勇者様。私は存じ上げないのです。この国の混乱の原因。それは魔王が存在し、人間の文明存続を脅かすものだと…」
『待て!!我は貴様らの文明や存続など興味はない!!』
「!?あ、あなたが、ま、魔王?!」
「おい、余計な口は開くな王!」
「も、申し訳御座いません!で、ですが…」
「大丈夫だ!黙っていろ!それとも全員消されたいか?!」
………どういう事だ?
俺はあの時殺された。
王達が黒幕ではなかったのか?
王の反応を見る限り、王の指示で俺を騙したわけじゃなさそうだが……
誰が……
『おい、龍一。こいつ怪しいな』
「いや、待て、いくら王だからと言って…」
『俺は魔王だ。魔王の眼は貴様らと違って、血液の流れ、心拍数や何を考えているかまで視えるんだ』
「それで、いつも俺の攻撃が…」
『まぁ、今はそれはいいだろう…この王とやらも怪しいが、あの城門前にいる中で1人だけ落ち着いてるやつもいる』
「どれだ?」
『そうだな、引っ張りだしてやろう〔グラビテーション〕!』
「うあぁぁがぁぁぉ!!」
魔王の〔グラビテーション〕は対象者や対象物を、任意の場所まで矯正的に引力で引きつける最上級スキルだ。
対象者は俺たちの目の前まで連れて来られた。
「ごほっ!!ごほっ!…よ、よう龍一!」
「え…お…お前は…!!」
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