第6話 元勇者と元魔王
宙に浮く影の先には逆光で見えづらいが、
人型のシルエットに黒のタキシード、
そしてタバコを吸っている人影が見えた。
その人物は徐々に近づきながら話してきた。
『おいおい、あれ消せるもんかよ!参ったな!はっはっはっ!!』
酒やタバコのせいだろうか。
しゃがれたその声は旧友と再会するような、
少し照れ臭さが混じった声だった。
俺は聞き覚えのあるその声に何故か安堵していた。
顔がはっきりと見えるその位置で、
魔王と呼んでいた彼は満面の笑みで笑っていた。
『よう!元勇者!!』
「まっ…まっ、おぉ…魔王様ーーーーー!!!」
オークキングが走り出し魔王に飛びつくが、再び宙に浮き突進回避した。
『えぇい!やかましい!いつもやめろと言ってるだろうが!』
「…うぅ…ご存命だとは…ぅ、嬉しくて…よくぞ生きて、我が主!!!」
「よう、魔王、聞きたいことがある」
「ちょ、ちょっと龍一君!!ムードぶち壊しだよ!あれ?龍一君魔王様と普通に会話できるの?」
『我が声は万人に届くものだからな!はっはっはっ!貴様もスキルを使わなくとも我の声が届いているであろう?して元勇者聞きたいこととはなんだ?なんでも聞くが良い!久しぶりだな!!』
「ねぇ龍一君、思ってた魔王と違うんだけど…なんかもっと威厳あって、重い雰囲気の…相容れないみたいな?」
「そっちの方が良かったか?」
「ううん…いやちょっと、ダンディなおじさまって感じで素敵かな!」
え?君島こういうのタイプなのかな?
まぁいいけど…
『おい!なんか聞くんじゃないのか?』
「そうそう!俺たちが最後に…」
ガチャ…ゴゴゴゴゴゴゴ…
話を遮るように宮殿の扉が開いた。
そう、ここは宮殿の前。
「なぁ、魔王。ひょっとして{ブラックホール}使ったのはこの城を消すためか?」
『あぁ、壊して残骸残るのもおこがましいんでな!!文字通り【無】に返してやろうとしたんだが、お前に消されちまった!!』
「そうか…なぁ、ここは俺に任せてくれないか?中に俺の知り合いもいるかもしれないんだ、確かめたいことも…」
『元勇者、お前の方が辛いはずじゃ…?』
「龍一だ!」
『ん?』
「俺の名は龍一だ、魔王」
『…龍一?ふふふ…そうか…はっはっはっ!!』
「いや、こういうときはお前も名前を…」
ゴゴゴゴ…ゴォーーーン…
!!!??
扉が開くとそこには下卑た笑みを浮かべた王族と騎士団が待っていた。
それに驚いたのではない。
そのさらに奥にクラスメートが一人一人縛られ、奴隷のような姿に見えた。
君島が声を荒げる。
「りゅ、龍一君…!!」
「分かってる…」
『「許さねぇ」』
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