第2話 小学生の過ごし方

「オレたちテツくんの家であそぶんだけど、ケンくんもいっしょにあそぶ?」

「あ。えっと、今日は用事があって……」

「そっか! じゃあ、またこんどあそぼうね!」

「うん」


 学校の授業が終わって帰り支度をしていると、クラスメートの男子に遊ばないかと誘われた。しかし僕は、彼の誘いを断った。


 別に急ぎの用事というわけではないのだけれども、反射的に拒否する言葉が口から出ていた。遊ぼうと言ってくれたクラスメートは、誘いを断った僕に対して嫌な顔もせずにあっさりと引き下がってくれる。何も気にしていないようで、僕は安心した。


 だけど、なんとなく居心地が悪くなってしまった。僕は、教科書の入ったカバンを背負うと教室から逃げ出すように帰宅した。


 クラスメートだから仲良くしたい、という気持ちはあった。何度か遊ぼうと誘ってもらって、一緒に遊んだこともある。ただ、その時に合わないなと感じてしまった。どうしても、彼らのテンションや感覚について行けなかったから。


 前世の記憶があるからなのか、もともと人付き合いが苦手だからなのか。


 僕はクラスメートたちと、程々の付き合いで関わっているだけである。前と同じく親しい友人は居ないけれど、イジメられてもいないのでこれで良いかと思っている。転生しても、やっぱり僕は僕なんだと自覚させられた。




「ただいま」


 マンションにある自宅。玄関に僕の声が響くが、返事は無い。やはり今日も両親は居ないようだ。仕事が忙しいようなので仕方ない。


 家に帰ってきたら、まずは学校で出された宿題を終わらせる。それから、その日に習った授業内容の復習と予習を済ませておく。小学生で習う内容なんて楽勝だと思うけれど、だからこそ間違いたくなかったから準備は万端にしておく。


 それに、中学や高校になれば授業の内容も難しくなっていくのを僕は知っている。前は中学生の頃に成績が徐々に落ちていって、高校生の時はダメダメな生徒だった。だから今度は、もう少しだけ優等生になれるように今のうちから勉学に時間を割いていた。


 せっかく他の人とは違う、前世の記憶という優位があるのだから活用していきたいと思った。


 勉強が終わったら、お待ちかねのゲームで遊ぶ時間だ。今日は、新しい進行ルートの確認をしてみようかと考えていた。


 プレイするのは既に何百回とクリアしたゲームだけど、今はタイムアタックをして楽しんでいた。新しく思いついた進行ルートが上手くハマれば、現在の自己ベストであるクリアタイムを6秒ぐらい縮められそうでワクワクしている。


 ゲームの楽しみ方というものは、様々ある。


 アクションゲームならオープニングからエンディングまで目指して死なないように頑張ったり、RPGならシナリオを隅々までじっくりと味わいラスボスを倒したり、シミュレーションなら戦略を練って最高の勝利を目指したり。


 その他にもクリアタイムの短さを競うタイムアタックや、プレイの内容を見ていてスゴイと思わせるような魅せるゲームテクニックを磨いてみたり、裏技やバグ技などゲーム制作者が予想していない攻略方法を探ってみたり。


 とにかく、ゲームを楽しむ方法は無限大だった。僕は、色々な楽しみ方でゲームを遊んでいる。だからこそ、時間がいくら有っても足りなかった。こんな風にゲームを探求していく時間が、とてつもなく楽しい。だからゲームは飽きない。


「よし」


 自己ベストを更新できて満足した僕は、ゲーム機の電源を落とした。途中、休憩を挟みながらゲームを十分に楽しんだ。そろそろ夕食の時間で両親が家に帰ってくる。その前にお風呂を沸かしたり、洗濯をしておいたり。家事をやって両親の印象を良くしておく。新しいゲームソフトを買ってもらうえるように点数稼ぎをするためだ。


 まだ小学生である僕は、欲しいと思うゲームを見つけたとしても自由に買うことは出来ない。お年玉とお小遣いをやりくりして、厳選した何本かを買う。だが欲しいと思うソフトは幾らでもあるわけで。なんとか両親にお願いして買ってもらうしかないという歯がゆい状況。


 まぁでも、そういう不自由な今も楽しい。子供の頃ってそうだったよなぁ、ということをリアルタイムで実感していた。

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