第四話①

 最近の天気は、あまりよろしくない。

 ざあざあともう3日は降っているんじゃないかと思う外の空模様を見て、あたしはため息をついた。今日、傘持ってきてないや。昨日使って、玄関に干しっぱなしのまま来てしまった。

 それに、給食、食べすぎたのかしらん。なんだか胸焼けをしているみたいで、今更のようにちょっと気持ちが悪くなっていた。


「……サノさん、1組のサノさん?いないの?」


「あ、は、はい!います!」

 どうも、思っていたよりもぼーっとしていたらしい。いかん、いかん、悪目立ちはしたくない。マエダさんも心配そうにこちらを見ている。


「ちょっと、呼ばれたら、一回で返事しなさいよ!もう」とプリプリしている女子に、申し訳なさげに頭を下げておく。


「サノさんって、前の学校に同じ苗字の人いたの?」

 先ほどの様子を見ていたのか、近くにいた男子が急に話しかけてきた。あたしが転校生なのは、やっぱり知っているらしい。「どうして?」とわけもわからず、あたしは聞き返す。


「いや、マドカがさ、サノさんって呼ばれて1回で返事しないことが多いって言ってたからさ。もしかして、前の学校で同じ苗字のやつがいたんじゃないかって思って。ほら、下の名前で呼ばれてたり、とか」


 マドカって…誰だ?と思ったものの、なんとか思い出した。ソノザキさんのことか。さすがリーダー的存在女子、他のクラスの人とも仲がいい。

 あたしがソノザキさんのことを思い出すのに精一杯になっていると、点呼女子が再び戻ってきて、大きい声で点呼を続けていた。

「3組、サトウ!サトルのほう!いる?」と点呼を続ける女子に、「へいへい、ここにいますよ〜」と、話しかけてきた男子がおちゃらけた返事をした。どうやら、サトウくんというらしい。返事が気に入らなかったのか点呼女子が、睨みつけたのが見えた。


「つーかさ、サトルのほうって扱いひどくね?」と睨まれたことに気がつかないサトウくんはぼやいている。

 確かに、名前がサトウじゃ同じ学年に何人もいるに違いない。近くで話を聞いていたらしいマエダさんも、共感したのか深く頷いている。マエダという苗字も、同様に結構多いのだろう。


「別に、同じ苗字の人がいたわけじゃないけど…さっきのは、ほら!ちょっとぼーっとしてただけで」


「あ、そっか。にしても、マドカには気をつけろよ?あいつ、いいやつだけど、たまに先入観と憶測と偏見が過ぎるから。いいやつだけどな」


 やたらと「いいやつ」を強調しているあたり、ソノザキさんは本当にいい人ではあるのだろう。ソノザキさんのことを聞くたびに、彼女が正義マンなような感じがするのは気のせいだろうか。

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