真っ白な闇と黒いクローバー
第一話
大人っていうのは勝手だと思う。
子どもには「学校でみんなと仲良くするのよ」なんていいながら、家ではパパとママによる大喧嘩の果てに部屋がひっくり返ったようになるし、テレビを付ければいじめが原因で自殺した中学生のニュースが流れている。チャンネルを変えれば、今度はどこか遠い国で起きた戦争やクーデターのなか必死にリポーターが叫んでいるのだ。戦争だっていじめだって、きっと何十年、ううん、きっと何千年もの前からあったものにちがいない。それがどうにもできないことだってことを、とうに知っているくせして、テレビの中の立派なスーツをかぶった大人ときたら、あたしたち子どもに向かって「仲良くしろ」だとか「イジメは許されない!」なあんて真面目な顔して、数千年解かれなかった無理難題を大人の半分も生きていないあたしたち子供に押し付ける。
本当に困ったものだ。
と、まあ、こんなことを言ってるけれど、別にあたしはこうした大人に対して、めちゃくちゃに抗議したいわけじゃない。ムリなものはムリ、と言いたいだけなのだ。いじめっこには近寄らない方が吉だし、とくべつに仲がいいわけでもないいじめられっ子とつるんで巻き添えをくらうのも勘弁。知らないふりをするのは加害者と一緒だなんて言うけれど、後先考えずに首を突っ込んで、返り討ちにあうことの方が多い。だからこそ、そういうイヤなことがなくならないんだろうけど、けれど、どうにもリスクが高すぎだと思う。
こんな話を長々としているくらいだから、ああどうやらこの子のクラスでは、さぞかしひどいイジメがおこっているんだろう、とか、助けようか迷っているのかしらん、などと考える人がいるかもしれないけど、残念ながら、いや違った、ありがたいことに、うちのクラスではそんなマンガみたいなわかりやすいイジメらしきものは無いみたいだ。
まあ、このクラスに転校してから、まだ数日にもならないあたしが言うのもおかしな話だけど。
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