第二話
二
「あれー、みんな、チャイム鳴ったよー?どうして後ろの方に集まっているのかな?
授業始めるよー」
チャイムの音から二、三分遅れて入って来た、さくら先生の声を合図にダルマさんがころんだ、は終わってみんなまるで何事もなかったかのように席につきました。
私も席に着きました。けれども、私の足はまだカクカクと震え、心臓はばくばくと音を立ててなっていました。
どうしよう、私は何か悪いことをしてしまったかしらん。
けれど、何が悪かったのだろう。何をすればよかったのだろう。まさか、おかあさんの呼び出しはないよね。それはいやだ。おかあさん、家に帰ったらお説教が長いもの。
「…さん、カンザキさん? 大丈夫? 具合が悪そうだよ」
先生の呼びかけに私はハッとしました。
「あ、はい。だいじょうぶ」
「そっか、よかった。本当に具合が悪いのなら言いなさいね」
そう言って先生はにっこりと笑いました。クラスのみんながさっきと同じように私を振り返ります。
けれども、よかった。今度はのっぺらぼうではありませんでした。みんな、心配そうな顔をしてくれています。
ハイ、と私はおとなしく返事をしました。
ナカノ先生がじっと見ていたあの感想文は、さくら先生が自由に書きなさい、と言ったものでした。だから私は自由に書いた。それが間違いだったのでしょうか。
わかりません。
けれども、あの感想文が原因となったのは間違いありません。何が問題だったかというと、あの感想文を自由に書いてしまったことだったのではないでしょうか。
自由ってムツカシイ、そう思いました。自由は不自由だ、なんて厨二病っぽいことを考えたのは、もう少しあとの話です。
それじゃあ、教科書開いてー、というさくら先生の声にみんながやがやと教科書とノートを開きます。
そのちょっとした騒ぎスキをみて、隣の席のイマミヤくんがそっぽを向きながら「お昼休み、外で遊ぼうよ。みんなでさ」と言いました。「ほら、今日いい天気だし」
確かに良い天気です。教室の窓から見える校庭の鉄棒やうんてい棒はお日さまの光でピカピカと光っています。
私はにっこり笑いました。
「うん! 遊ぼう!」
「こーら、カンザキさん、イマミヤくん、おしゃべりはダメよー」
だめだめ、とちょっと古いネタを持ち出すさくら先生にクラスのみんなが笑います。
いつの間にか私の足の震えは止まっていました。
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