第8話
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法要の開始時間は10:00からであるが、関係者は1時間前からスタンバイしている。中継車も2台入っていて準備万端なようである。メイン会場には両サイドに5階段のスタンドを設けている。子供達3人も関係者の腕章をして忙しくしている。
[親分、満杯です。皆がお土産を買ってくれたら大儲けですけれどね。][物事急いては事を仕損じるっていって、ガッツいたらうまくいかないって言うことよ。][そうだジョー。こういう時は死んだふりも大事だジョー。][あれ~、売れないとおこずかいが無くなって駄菓子も買えないよ。][それはダメだジョー。お小遣いは欲しいジョー。]
開始時間の10分前になったので寺猫25匹も、2人の老師の隣に整列している。王様一行は家族と共に一段後ろにいる。時間になったのでおもむろに観世音菩薩の真言の唱和が始まった。このまま40分続ける予定だ。猫もミャーミャーと元気よくやっている。
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唱和が終わってから王様一行がいつもの最上位の観世音教の装束を着て祭壇の前に進み出て一礼をしてから上部まで登り、再度一礼して王様と犬2匹が前に進み出た。
8回全員で観世音菩薩の真言(マントラ)オム マニ ぺ メ フ ムを唱和した後に”ムッ”っと短いが鋭い気声を発した。すると15メートルの巨大な青銅製の猫観世音像が現れた。周囲から大きなどよめきが起きた。再度一礼してから元の位置に戻ってから祭壇を降りて向き直って一礼をして元の席に戻り、約15分の唱和が続けられた。
事務長の、”以上で落成開眼式は終了です”の挨拶ですべてが完了である。
3人はお土産の販売に切り替えて威勢よく呼び込みを始めた。タエは一歩下がって忙しい方を手伝うことにしている。2店ともに相談は後回しにしてお土産品をスピーディに大量に捌いている。王様一行は2人の老師に挨拶をしてから帰って行った。ほとんどの群衆は本当に一気にできてしまったのかと何度も目で追っている。
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ネコ寺の和尚さんは最初から予定していたのか牛乳をたっぷりと与えた。猫達も満足してほっと一息入れているようである。
ター坊達は30分ぐらい忙しかったが何とか落ち着いて来た。王宮から2種類の月餅が届いている。人数分渡しても5人分が残ったので和尚さんのところに持っていった。タエは猫800匹の大法要の話をしないといけないのだ。
[和尚様お疲れさまでした。2種類ずつ5人分の月餅が王宮より届きましたので、どうぞ召し上がってください。][それはどうもありがとう。ありがたくいただくよ。][それから王様がおっしゃるにはたぶんゴンちゃんからの送られてくる気で判断したんだと思いますけれど、ボスネコのトラちゃんが2週間後ぐらいにここのお寺から歩いてこられる距離の飼い猫や野良猫が、銅像の前に800匹ぐらいが大集合して子供の健康や成長を祈願するとともに自分達の健康や交通事故それに充分な食料を得ることを祈願するそうです。]
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和尚[800匹よりももっと多くなるような感じがするぞ。門前町駅ぐらいからを想定していると思うけれど、それは普通の場合で強い使命感に燃えた場合は休み休みでもここにくるからその倍を見ておいた方がいいぞ。]
[1.600匹も来たらお寺は猫で埋まっちゃうジョー。たいへんだジョー。]タエ[物凄いことになってしまいますね。でも年に1度はこんなイベントがあってもいいと思います。警察もネコが横断歩道をちゃんと渡れるように交通整理をしないといけません。それでは1日だけ日本語がわかるようにしてもらって、信号を守って警察官の言うことに従うように設定を組んでもらいます。ゴンちゃんにお願いをすればやってくれると思います。]
[そうだな。ゴンちゃんの観世音菩薩様なら可能だな。][それではトラちゃんにいつなのか決行日を聞いて市長さんのところに行ってきます。たぶんゴンちゃんが雨が降らないようにしてくれますので、それで決まりだと思います。]
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[トラちゃん、法要でみんなを呼ぶのはいつになるのかな。]手で8の字を書いている。[8日ね。わかったわ。車に轢かれないように警察官やボランティアの人達が手伝ってくれるように市長にお願いしてくるわ。]ミャーミャーミャー。
手の空いたター坊とよっちゃんと共に市長の所にやってきた。さすがに驚いている。広報を呼びつけて世界中にこの事を知らせるように伝えた。警察へ交通整理の要望を伝えるとともに、ボランティアの募集もするということだ。
市長からまた食堂で自由に食べていいと言われたので、前回と同じように3人共にカツカレーとフルーツサラダにジュースを頼んだ。[ここのカツカレーは案外といけるんですよね。オーダーがあってから揚げている感じだな。][そうだジョー。福丸デパートの社食と同じくらいに美味しいジョー。][広報が世界中のマスコミに情報を流したら明日も本堂で会見かな。][親分はすっかりネコ寺で有名になったんで、芸能人になれますよ。]
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