第5話

21

タエ[はい。観世音宗の開祖は現国王のおじいさんと観世音寺の老師とカイラス寺の老師の3人です。その3人がここの山門付近を通りかかりましたら5匹の猫がいまして、その猫達に導かれて今のネコ寺の地に行かれたということですが、気が充満していて霊力を発することにすぐに感じたのでここにお寺を建てたということです。


ここの老師はその中に茶トラが3匹いたことをはっきりと覚えているそうですが、その中の2匹がこのボスネコの茶トラの先祖なのです。その5匹の猫は天界で観世音菩薩にとてもかわいがられていて、超能力を授かってこの地に降臨されたそうですので、それが子孫にも受け継いでいるということです。このことは動画で打っている様子がありますが、印字で知りました。]


記者[なるほど。由緒正しき観世音菩薩の超能力を授けられた子孫ということですね。これから約2週間後に15メートルの銅像が立つということで多くの観光客が来られます。活躍を期待しています。]

22

ター坊の両親の店猫屋に猫用のパソコンが入ったということなので、ボスネコを連れて3人でやってきた。タエ[トラちゃんやってみてくれる。]ミャーミャー。軽快なタッチで打っている。煮干し2匹と新鮮中型鰺2匹は必ず守るようにまた打ってきた。タエ[大丈夫よ。王様がここの和尚さんにちゃんと伝えてあるわ。]ミャーミャー。ボスネコは戻って行った。


ター坊母親[駄菓子とカルピスでも飲みなさい。]タエ[どうもありがとうございます。15メーメートルの銅像と超能力ネコの直接の占いが始まりますと忙しくなりますね。]


母親[そんな感じですね。でも30分10万円のギャラはすごいですね。私達は5千円ですから20倍ですよ。福猫さんと寺銭を払っても4万5千円というのは大きいです。月に1・2回でもあればいいんですけれどね。]

[ボクはもっとあると思うジョー。世界中に困っている人はいっぱいいるジョー。]タエ[そんな感じもするわね。]

23

山門脇の日本蕎麦屋の3歳の娘が2匹の茶トラの2か月ぐらいの子猫を引き連れてやってきた。先日に雨が降っている時に一晩帰ってこなくて、警察と警察犬にお世話になった子である。結局ここネコ寺の本堂の下で多数の猫と共にいたのを、ゴン太達が見つけたのであるが猫が大好きである。娘[こんにちはお姉ちゃん。この2匹かわいいでしょ。]ミャーミャー。


タエ[2匹ともボスネコの子供ね。そっくりだわ。]よっちゃんもネコ好きであるが、それがわかるのかすぐにまとわりついてきた。[うっひゃっひゃっひゃ~、かわいいジョー。]


母親[こういう可愛いのが店の前にいると、宣伝になるわね。]

ここのまったりとした雰囲気にそぐわない、半グレの少しいかれ気味の3人組が入ってきた。[なんだここは。こ汚ねえ野良猫がいっぱいいるぞ。]タエ[お兄さんたち。ここの猫たちは野良猫じゃあなくてお寺の飼い猫ですよ。訂正しなさい。]

24

[元気のいいガキんこだ。テキヤの娘だろ。なんか食い物持ってこいや。][あんたにやるのは猫の糞ぐらいしかないよ。ここは新門のシマ内だ。大きな顔をするんじゃあないよ。]タエの頭を殴りつけようとした瞬間、アルゼンチンの狩猟犬でピューマもタイマンで倒すというDOGO ARUZENTINOと四国犬のMixのダイとウメが相手の太ももに猛然と噛みついた。


[痛ぇ~、なんだぁこの犬達は~。]これを見ていた他の2人も戦いの覚悟を決めたようだ。と、その時25匹の寺猫がボスネコに率いられて2人のふくらはぎを、ネコパンチの嵐で猛烈にひっかきだした。たまらずに3人は足を引きずりなが逃げ出してしまった。


タエ[ター坊とよっちゃんはビビっちゃって何にもできなかったのに、猫たちの方が活躍したわ。明日、合気武道の教官に根性を叩きなおしてくれるように言っておくわ。][それはダメだジョー。教官は厳しいジョー。]

25

仏教センターの事務長が王宮で王様と5日後のネコ寺の落成開眼式についての打ち合わせである。事務長[観世音寺とカイラス寺の老師には既に伝えてあり、快諾を得ています。


国内外からの取材参加の申し込みが大変に多くて整理がたいへんですが、何とか境内に納まるように段取りをつけています。瞬間的に15メートルの仏像が本当にできるのか世界各国に中継されますので、国際的にも有名な場所になります。それから観世音寺の老師がおっしゃられるには子供が健やかに育つような御利益があるということで、別名子育て観音にしようかとのことです。]


[それはいいな。猫の強い生命力にあやかってのことだと思うが、案内板にでもネコ寺のいわれと共に日本語と英語で説明を入れてください。]

タエたち子供3人組がシマ内の見回りをしている。今日はいつもの豆絞りの鉢巻に股引腹掛けに新門の印半纏ではなく新装束になっている。

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