小説を書くにあたって最初に行ったのは、兎にも角にも手本を知ることだった。とりあえずは真情美が読んでいた本と同じ作品を買ってもらおうと本屋に行った時に親にせがんだら、漫画以外で文字だらけの本を読みたいと言った姿勢に感心されて直ぐに買ってもらった。

 買ってもらった小説はライトノベルと言ったジャンルの作品で、表紙に続いて何枚かのイラストが書かれており、そこには真情美が講説した”世界の滅亡”を描いたイラストも描かれている。

 おどろおどろしい背景の中央に立つ銀髪の男、ノスフェラトゥ・ロードの姿は、なるほど確かに橋本に少し似ていた。次いで、キャラクターのデザインを込み入れた登場人物紹介を挟み、文字だらけの本編が始まる。


 一瞬拒絶反応も出たが我慢して読み進める。


 話の内容はイラストに違わずダークファンタジー的作品だった。ライトノベルだけあって読みにくい漢字には振り仮名がされており、難解な言葉の登場はそれほど多くなく、意外にも読みやすく仕上がっている。

 小説には様々な悪魔が登場した。ノスフェラトゥ・ロードの種族である吸血鬼ヴァンパイアを始め、狼男、ゾンビ、悪霊、妖精、などなど……。

 全ての悪魔が敵側にいるわけではなく、数少ないながらも悪魔の中には主人公たちと利害関係が一致し行動を共にする奴もおり、渾然一体となっている主人公たちを待ち受ける運命は、単純な勧善懲悪と言った話ではなく、いろいろな視点での事情が入り組む考えさせられる内容となっていた。


 主人公のシングは善なる存在という女神の恩寵を承った勇者で、旅の中で色々な問題を解決する中で仲間も増えていくが、敵役である悪魔に関しての描写は主人公陣営よりも細かく描かれている。特徴や特性、弱点などがうまく物語に盛り込まれ、それを活用する主人公たちの大立ち回りは読んでいて手に汗握る展開の連続だった。

 敵役の悪魔の中で一番惹かれたのは、ノスフェラトゥ・ロードとして主人公の前に立ちはだかる最大の敵、吸血鬼ヴァンパイアのヴァンヘルだった。

 他の悪魔に比べて特徴も多く、強力な力を持つ反面、弱点が多いのも魅力の一部だった。何よりやや単純思考が目立つ他の悪魔に比べ、人の血を吸って生きているためか人間的思考を持ち、趣味趣向を持って生きている姿は人を惹きつけた。

 小説は続き物らしく、買ってもらった巻の最後では、ヴァンヘルと人間の間にできた子供、ダムピールがシングたちと行動を共にすると言うシーンで終わっている。

 続きの展開が気になるところではあるが、まずはこれを手本に小説を書くことにしよう。

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