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東京、浅草駅。
空は雲ひとつない快晴で、冬の始まりに相応しい澄み切った青色に染まり、日光が強く照り付けていた。
休日ということもあり人通りもそれなりにあった。道路脇には客を待っている人力車の人たちがまばらにおり、観光客に声がけをしていた。短い股引から見える素足を見て、寒くないのかと心配になる。
僕は河鹿から指定された待ち合わせ場所である、駅を出て大きな周辺マップが設置されている場所に到着した。
時刻は12:45分。待ち合わせは13時丁度としており少し早く着いてしまったようだ。周りを見渡しても河鹿の姿は確認できず、とりあえず到着した旨を彼にメールする。
一応、今回の件は田村さんに電話で相談した。
田村さんはそれほど悩むこともなく「行ってきなさい」と答えた。ある程度考えるか、阻止されるのではないかと想定した僕の予想とは違って唖然とする。
《おそらく、向こうはデートに託けて私たちの関係、目的を探る魂胆でしょう》
「いや、デートって……。ってかそれ、大丈夫なんですか? 森田のこととか聞かれたら逃げ切れる自信ないですよ」
《多分それはないわ。彼の前で森田くんの話はしたことがないし、出会ったのも川での遭遇ってだけ。おそらく川の怪異に関しての話だけで済むでしょう。まさかもうひとつ、別の怪異が身近で起きているとは相手も思っていないでしょうし。私としても河鹿くんがどの程度、異常な事態のことを把握しているか気になるところでもある。
これは一種の諜報合戦よ、相手もこちらを利用しているのだから、こちらも相手を利用しない手はないわ。
いい、久保谷くん。イニシアチブを取りなさい。相手より優位な関係を取って相手から情報を聞き出すのよ》
…………何だかどこかで聞いた言葉だ。僕はそれを凄く良く知っている。バンダナ巻いて段ボールに隠れている、バリトンボイスの超イケボが特徴的な隻眼の男が脳裏に過ぎる。って言うか……。
「田村さん。蛇退治専門の相手に会うってのに、そのネタはあまりにも縁起が悪い」
《良く分かったわね、一度言ってみたかったの。言う機会が無いと思ったけど、まさかの幸運ね。ま、それはそれとして情報は欲しいわ。だから、行ってきなさい》
まったく。僕に期待されてもそれに応えられるかどうか分からないが、こうなったらもう、やるしか無いか……。
「わかった。
それではフロッグイーター作戦を開始する」
《あなたもノリノリじゃない》
「一度言ってみたかったんすよ。これ」
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