Interlude-Arianote 感情
物心ついてすぐ、
幼い時分ながら自分の欠陥を認めた
何故なら、ヒトにとって感情は重要な要素です。それは、周囲の反応や読み聞かせられた物語から理解できました。何かを成し遂げるためのモチベーションや何者にも惑わされない信念など、そういったモノを保つのに必要なのですから。
感情のない
自身の破滅など、とうてい許容できないことです。
ゆえに、
どうして、その結論に至ったのかといえば、心の芯が欲しかったからと答えるのが適当でしょう。感情のない
だから、目標を定めました。それを中心に行動すれば、
『大切なモノ』を定めるという対処法は、正解だったと思います。国のために動くと決めてからは、少しだけ
最初に行ったのは、自身の研鑽です。国を守るために必要なのは、武力と政治力。その二つを磨こうと、精力的に活動しました。
幸い、
魔法方面も、頭脳が活かせました。イメージが重要となる魔法ですが、それらは緻密な計算でも代用できたのです。お陰で複雑な術式構築などが行えるようになり、
順風満帆に思えた
術式構築の腕を一定まで鍛えた辺りで、気が付いてしまったのです。この世界は呪われていると。国どころか世界を滅ぼしかねない何かが存在すると、認めてしまったのです。
元凶を探るため、
そして、辿り着きました。『西の魔王』の封印地へと。
それまで学んだ知識では、『魔王は完全に封じられており、百年に一度に行われる勇者・聖女の儀式によって補強される』とのことでしたが……とんでもない嘘っぱちでした。
術式構築を極めていた
この時の混乱は、今でも鮮明に思い出せます。何せ、生きるために掲げていた『大切なモノ』が崩れ去る瀬戸際だったのですから。
自分の手で魔王を倒そうとは考えません。中にいる敵が
当時の試算では、二百年は先延ばしできると踏みました。その猶予を最大限活用し、魔王への対抗策を練ろうと決意しました。
少し予想外だったのは、弟のネグロがすでに魔王陣営に引き込まれていたことでしょう。魔女の手で洗脳教育を施されていたらしく、もはや手遅れでした。
政治ばかりに目を向けていた弊害ですね。身内への監視が疎かだったのは失態です。
とはいえ、悪いことばかりではありません。身内に敵の先兵がいる状況は利用できました。それとなく誘導を行えば、魔王陣営の勢力拡大をコントロールできます。
そうして、
○●○●○●○●
希望が見えたのは、
”新しいフォラナーダ伯爵である色なしが、剣聖に圧勝した”
この情報を耳にした時、
彼の話はかなり荒唐無稽でした。現場を目にした者でなければ、とうてい信じられない情報の数々でした。現に、側近であるルイーズは疑念を抱いている様子。
しかし、
それから学園入学まで、
そして、学園へ入学して、フォラナーダ伯――ゼクスさんと直接相対して、
実力もさることながら、この
今思えば、彼へ抱く感情は、比較的に大きいものだった気がしますね。それでも常人よりは小さい機微ですが……それだけ、
何より興味深かったのは、ネグロが放棄した研究のことごとくを、彼らが完膚なきまでに潰していた点ですね。狙っているのでは? と疑いたくなるほど、タイミング良く居合わせるものですから、笑いたくなってしまうほどでしたよ。
ただ――やはりと言うべきか、ここでも予想外の展開が発生しました。より上手くコントロールしようと魔王陣営の懐へ入った際、判明した事実です。『西の魔王』には、光魔法以外を無効にする耐性があるようでした。
計算外です。これでは、ゼクスさんの攻撃は一切通りません。実際、魔王がちょっかいを出した時も、ダメージを与えられていませんでした。
計画を微修正する必要があるでしょう。ゼクスさんなら何かしらの対策を講じるかもしれませんが、万が一に備えるべきです。
聖王家の文献をひっくり返し、”自分の命と引き換えに魔法適性を譲渡する魔法”を発見しました。
計画は順調に進みました。無属性の二名を利用すれば、ゼクスさんは単独行動を始める予想は見事的中。ネグロとブルースの方も問題ないでしょう。魔王は復活します。
あとは彼が
そう、あと一手だけだったのです。僅か数ミリさえ進めば、すべては成功するはずでした。
しかし、結果は異なりました。ゼクスさんは
その後、ゼクスさんが語った内容は、正直理解しがたいものでした。カロラインさんたちを信じているから、危険を承知で優先事項を変える。意味が分かりません。
魔王が討伐され、すべてが丸く収まった今も、納得しかねています。結果論に過ぎないと否定したい気持ちが強いです。
「ふふっ。『気持ちが強い』ですか」
ここまで感情を惑わされた経験は、今までありません。
きっと、彼に興味を惹かれているのが原因でしょう。
フォラナーダが
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