第12話 ヒーラー、ギルドパーティを見返す

 ダンジョンボスであるリザードマン・ロードを見事倒し、B級ダンジョン攻略を攻略することができた。拠点に戻ってからの食糧用にリザードマン・ロードの肉と素材としてリザードマンの鱗を剥ぎ取っているとセシリアが部屋の奥である物を見つけた。


「フール!! 何か箱あるよ箱!!」


「あ、こら! ちゃんと臭いを嗅いでから近づくんだぞ」


「分かってるよ! クンクン……」


 罠が複数あるかもしれないのでダンジョンを攻略できたとしても気は抜けない。セシリアは宝を見つけると目を離した隙に1人で勝手に向かってしまいそうなので、手早く剥ぎ取りを済ませてセシリアの方へと向かった。玉座の後ろでセシリアは俺の言われた通り一度距離を取って、臭いを嗅いでいる。目線の先にはミミックの時とは正反対で汚れた大きな木箱が置いてあるだけだった。


「うーーん、別に変な臭いはしないから害はなさそうだけど……」


「ボスが隠し持ってるアイテムとかはこんな感じで木箱とか壺などに隠す奴が多いんだ。あんなあからさまに綺麗な箱は偽物の事が多いから覚えておくといいぞ」


「分かった!」


 セシリアの臭い探知で異常がないことが分かったのでその木箱を開けてみることにした。木箱を開け、中を見てみると雑多に入れられた少量の薬草と新品のデザインが同じレザーアーマーが2つ、そして剣が1本入っていた。

 俺が取り出して確認してみると、それは綺麗に磨き上げられた鋼で作られた上質なレイピアだった。


「武器が入ってるじゃんフール! ねぇねぇそれ頂戴!」


「そうだな、近接武器は全部セシリアに任せるよ。よかったなセシリア」


「うん! ふへへーー♪」


 新しい武器を手に入れたことがとても嬉しかったのか、 俺からレイピアを受け取ると頬をすりすりとレイピアに擦り付けていた。


「レザーアーマーもあるじゃないか。丁度2着あるから2人で着ようか、セシリアのやつはもうボロボロだし」


「え! う、うんそうだね……」


(こ……これってフールと実質ペアルックってこと⁉ ……ふへへ♡)


 セシリアの気持ちなど知らない俺は自分の服の上からレザーアーマーを着た。うん、薄手の服よりかは防御力はある方なので着ていて損はない。

 セシリアも古いレザーアーマ―を脱ぎ捨てて、レザーアーマーを着た。鼻歌を歌いながら耳がピコピコと動き、尻尾も振っていて上機嫌そうだった。

 一応何かに使えるかもしれないので雑多に入っていた薬草類も持ち帰ることにした。


「ねぇフール!! この玉座も持って行かない? 座り心地は最悪だけど良いインテリアになるんじゃないかしら!!」


 そう言って、リザードマン・ロードが座っていた玉座を両手で軽々と持ち上げている。流石獣人族……筋力に優れてやがるぜ。

 でも、その考えもありかもしれない。どうせ、当分はこのダンジョンの入り口で生活する予定なのでキャンプ地も快適にしていきたい思いはあった。


「じゃあ、それも持って行こうか」


「わーいわーい♪」


 そう2人で話していると、このボス部屋の入り口から複数人の足音が聞こえてくる。そして、その足音はボス部屋の前で止まり、ゆっくりと扉が開かれてゆく。

 そして、部屋に数人の人間が入ってくる。


「て、てめぇはフールじゃねぇか⁉ 何してんだこんなところで⁉」


 そいつらは俺が元所属していたバールの国のギルドにいたギルドメンバーの一人で戦士のガイとその他3人で組まれたギルドパーティだった。こいつらもこのダンジョンを見つけて攻略をしようとしていたみたいだが一足遅かったようだ。


「何って、ダンジョン攻略に決まってんだろ」


「てめぇ一人でか? はっ!! そんなホラ話あるわけねぇだろ!! お前みたいな無能回復術士がよぉ!!」


 会ってまず俺を見下し、馬鹿にする。ギルドに居たときのいつもの流れと一緒だ。俺はまた怒りが込み上げてきて、拳を固く握りしめた。


「フールの言っていることは本当よ。それに、もうフールは1人じゃないわ」


 俺とガイの間に割り込んでセシリアが話に入ってくる。


「あん? 嬢ちゃん何もんだ?」


「私はセシリア、私はフールとパーティを組んだの。ここのボスはもう倒してダンジョン攻略しちゃったわ。ほら、これが証拠よ。因みに私とフール、2人だけで倒したんだから!」


 そう言ってセシリアはギルドパーティの一団に向けてリザードマン・ロードの首を投げ入れる。その首を見てギルドメンバーは青ざめた顔をする。


「う……嘘だろ、F級入りのたった2人パーティでリザードマン・ロードを倒すだなんて……」

「やっぱりフロアで魔物が出てこなかったのはこいつらが倒したからってこと?」

「……やば」


 後ろでパーティメンバーが慌てふためく中で、ガイも驚きを隠せなかった。


「フ、フールのくせに……こんな……嘘だ!! 嘘に決まっている!! お前ら!! 一度ギルドに戻るぞ!!」


「やーーい!! ばーーかばーーか!!」


 そう言って、ギルドパーティはそそくさとセシリアの悪口を無視して、この場を後にして立ち去って行った。


「セシリアすまないな。恥ずかしいところ見せてしまったよ」


「そんなことない!! フールは凄いんだから自信もってよ!! 私が保証するから♪」


 セシリアは大きく胸を張って、鼻を高くしている。俺も人間に対して強くならなきゃな……


「……よし、俺たちも入り口に戻るか」


「うん! 戻ったら、リザードマン鍋だね!」


 こうして、突然現れたギルドパーティを見返すことができて、少しだけ自信がついた俺たちは入り口のキャンプ地点まで戻ることにした。

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