第四話 ルール説明
四足歩行の方が歩きやすいだろうその体を揺らしながら、ドラゴンは教室の前方、教壇に向かう。
「着席なさい」
力のこもる言葉に、立っていた生徒は慌てて自分の席に座る。
先生かよ! という生徒たちの心の声が聞こえるようだった。
エースとキリも、指定された自分の席に座る。
一通り教室が静かになると、ドラゴンが話を始めた。
「まだ一人来ていないか」
見れば、教卓の真ん前の席が空いている。
「まあいい、先に始めてしまおう」
ドラゴンはチョークを手に取り、黒板になにかを書いた。
「先生の名前はダオール。このクラスの担任を受け持つこととなった。覚えておけ」
黒板にダオールと達筆に書かれている。
「まずはこの学園の説明から始める。よく聞け」
ダオール先生は黒板になにかを書き始める。
いや、もうちょっと先生自身の紹介してよ、という生徒側の心の声が聞こえてきそうなほどの流れの中、事務的に話を進める。
「まず、この学園に学年というものはない。全ての行事はクラス単位で行われ、他のクラスとのカリキュラム的な交流も無い」
カッカッカッと、チョークが黒板を引っ掻く音が連続する。
「学び舎である以上、勉学にも励んでもらうが、生活のメインは別の事柄になることが多い。それがこれだ」
黒板に、『クラスのテーマ』と書かれている。
「クラスごとにテーマにそったイベントが起こる。基本それを避けることはできない。ゆえにそのテーマのイベントをこなしていくことがメインとなる」
「あの、テーマってなんですか?」
アーチェが手を挙げながら言う。
「例えばだ」
ダオール先生が黒板に書き加える。恋愛、スポーツ、バトルなど、物語の大まかなジャンルが並ぶ。
「この学園では、他の国では有り得ないほど特殊なイベントが起こりやすい。それは明確なテーマとなって、そのクラスを決定づける。まあ、ありがちなところでは、恋愛だ」
首だけ生徒を振り返りながら、カカッとチョークでその文字を叩く。
「男女比が極端にかたよっていたりすれば、ハーレム、逆ハーレムになりやすい。そういう意味では、このクラスではそうはならなそうだな」
現状九人で、男五の女四だ。
「他にもほのぼの日常系、スポ根、バトル、特に異能バトルが最近多いな。ただ最悪なのが、これも最近増えてきた、デスゲーム系だ」
教室内の空気が冷えた気がした。
「まあ、そうはいっても滅多にない。心配するだけ無駄だ」
そんな言葉で安心できるはずもなく。
「注意事項としては、基本的に生徒が中心となってテーマを進めていくことになる。学園側の支援も、出来る限りはするが、期待しない方がいい」
「このクラスが、実際にどんなテーマになるのか、わからないのですか?」
そう言ったのは、桃色猫耳の女子生徒だ。先生が視線を向ける。その表情は、読み取りにくく、わからなかった。
「始まってみないとわからない。それも、いつ始まるのかも決まっているわけではない。大半は一、二ヶ月だが、半年ほど明確なテーマがわからないままのこともある」
「それは誰が決めるのですか?」
「この学園そのものだ。つまり、クラスの因縁のかたよりが、その方向性を決める」
「なんとなく決まるってことですか?」
困惑したような声に先生は、
「そうだ。楽しみに待っていろ」
と、そう続けた。
生徒たちはなにかを探るように、お互いや周りを見回したりしている。楽しみになんて言われても、そんなに気楽にはいられない。
「次の注意事項だ」
生徒の不安をよそに、先生は黒板の『クラスのテーマ』の横に、『メニューウィンドウ』と書いた。
「知っているものもいると思うが、この学園は情報系の世界の中にある。世界そのものが数字によって成り立っていて、逆に言えば、全ては数字であらわすことができる」
先生の目の前の中空に、いきなりウィンドウが現れた。そのウィンドウの中に『E=mc^2』と表示された。
「それはすべからく、お前たち自身にも数値があるということだ。まずは自分のウィンドウを開け。コツは、立体視をするときのようにピントを合わせるんだ。そして自分のステータスを確認しろ」
生徒たちは、四苦八苦しながらウィンドウを表示させる。
「初期設定では閲覧許可は本人のみだ。他人に見せたいときは設定を変えればできるが、個人情報でもあるからな。限定公開で範囲は指定しておけ」
この学園ではないとはいえ、元々情報系の世界出身の《剣士》エースは、慣れた様子でウィンドウを開き、操作する。ステータスウィンドウが開き、各種パラメータが表示された。その内容を公開制限して他人の閲覧許可を設定すると、エースの前の空中にステータスウィンドウが現れる。そのあとはウィンドウ操作に苦戦しているキリにやり方を教えていた。
他のクラスメイトもなんとかステータスを確認するところまでは進めたようだ。
「ステータスの内容のメインは、レベルから始まる各パラメータ、そして《
クラスのざわつきを無視して、先生は続ける。
「《
それを聞いて自分のレベルを確かめる生徒たちに向けて言った。
「その内容を参考にして、これから自己紹介をしてもらう」
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