白い怪人とその子
PEN
無題
リブラは異空間の入り口…即ち玄関と思わしき場所でしばらく主を待っていた。ドアは開いている。
開いていても、敵などは入って来ることがないのをリブラは熟知している。それは主の結界によるものだった。
このころ、リブラは孤独で自由な時間を過ごしていた。
兄と呼べる魔導士は、異世界へと滞在するそうで、しばらく会えていない。
一人で食事を作り、たまに表世界へ降りたっては、父親となった研究員やその友人である悪魔とたわいもない話をしたり、ギルドに赴いて依頼をこなしたりしていた。
そんな中、数週間不在だった主の帰りだと察知できたのだ。それをさせたのはリブラの主、ファントムの力である。
住処の外は真っ暗な空間であるため、出かける時以外は外に出ようとしないのがリブラだ。慣れてはいるが、通り道であるとは言え、安定しているとも言いきれないのだ。
リブラは食事は別にとらなくても良い身体である。腹を空かせることはほぼないが、付き合っている知人たちと合わせるために一日三食を欠かさぬようにしている。
「ん?」
リブラはこちらに向かってくる主の姿を捉えたのだが、いつもの『悪魔クロウ』を模した姿でもなく、はたまた青い人魂の姿でもない。
(あの姿は初めて見たな。でもアレがトムさんなのか)
リブラはしばらくして歩いてきたファントムを迎え入れた。
「リブラ、ただいま帰りました」
「おかえりトムさん」
ファントムは白い髪に小さなシルクハットを被り、黒い衣装に赤い布を右肩にかけている。何故か左目は銀色の仮面をつけており、少し表情が伺いにくいかもしれない。
「これどうですか?少し既存の悪魔をアレンジしたんですよ。そろそろ区別をつけたいと思っていたのでね」
リブラは少しばかりファントムの全身を眺めた。
「なるほどな。マスターらしいと思うし、かっこいいじゃんか。あ、今日の食事はカルボナーラでいいか?」
「ええ、とてもありがたいです」
ファントムが微笑むの見て、主を中に入れ、ドアをゆっくり閉めた。
――どうしてこうなったかは食事中に聞いておくとしよう。
リブラもまたつられて密かに微笑んでいた。
白い怪人とその子 PEN @bakusisapen
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます