第57話 【4日目午後】 矛盾
パラディーゾはその声に反応して、ドアノブにかけた手をピタリと止めた。
コルテロは銃口を副支部長に向けた。
パラディーゾはドアノブに手をかけたまま振り返えると、コルテロと目が合った。
目の前で銃を向けられているというのに、焦るそぶりを微塵も見せずにパラディーゾは落ち着き払って口を開いた。
「何のつもりだ? コルテロ」
「アリアの言う通りです。 状況を説明していただきたい。
それと、あなたが知っていることを教えて頂きたい」
「フン、お前は自分が何をしているのか分かっていない」
コルテロが小銃を手に取った瞬間から、近くで話を聞いていた職員たちはコルテロの行動に反応していた。
副支部長に銃口を向けるコルテロの周りを武器を掲げたフィオリレ支部の職員たちが即座に取り囲んた。
アリアも自身の小銃の狙いをコルテロの頭部に定めていた。
ブルシモはそんな状況に「ッヒ」っと小さな悲鳴を上げて、体を縮めた。
「コルテロ・・・銃を下ろして」
「アリアの言う通りだ。 まずは銃を下ろせこのクレティーノ(愚図)。
これだから田舎の運び屋は・・・暴力で何でも解決できると思っているその粗野な頭に思い出させてやる。
フィオリレ市は伝統と文化の町、我々運び屋にも気品と人柄を求め、古いしきたりを重視する客が多い。
故にフィオリレ市の運び屋の職員の殆どが従軍経験者だ。
兵役を経験した人間なら、最低限の言葉遣いと規律は身についているからな。
例え、お前が『英雄』と呼ばれるほど腕の立つ元軍人だとしても、実践経験のある人間10人以上を相手にたった1人で何ができるっていうんだ?
分かったらさっさと銃を下ろして、自分の仕事に取り掛かれ。
時は一刻を争うんだろ?」
コルテロは銃口を下げるそぶりを見せず、包囲している職員たちの銃を握る手に力が入る。
「ハァ・・・いい加減にしろクレティーノ(愚図)。 何が気に入らないんだ」
コルテロは小さく息を呑むと、唇を湿らせた。
「3日前に北部草原基地が襲撃されたときにボス・・・モンタグナ社長はラゴ支部に伝書鳩を飛ばしていました。
目的地であるオウロ島までの中継地点でもあるフィオリレ支部にも社長が鳩を飛ばしていたとしても不思議はありません。
けれど、ラゴ支部に届いた伝書を読んだラゴ支部長は『シリエジオ王女』と『ガバリエーレと言う名の男』の存在を知らなかった。
それに周りのこの反応、いくら説明下手なあなたでも今回の件を部下に説明しなさ過ぎじゃないですか?」
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