第58話 【4日目午後】 内通者
「コルテロ・・・ラディがあんたを襲った奴らとグルだって言いたいの?!」
「アリア、そしてフィオリレ支部の職員たち。
今話した通り、北部草原基地はロッソ家の私兵から襲撃を受け、現在基地は壊滅状態です。
・・・そう、あの三大侯爵貴族のロッソ家です。
多勢の敵に包囲され、散り散りに逃げるのが精一杯でした」
コルテロを取り囲む職員たちはどよめいた。
「なぜロッソ家がアッセロ運送会社の拠点を襲撃したのか。
理由はシリエジオ王女が我々にとある依頼をしたからです」
「コルテロ様!」
人垣の端で小さくなっていたブルシモは声を上げた。
途端に彼女の近くにいた数人の職員たちが彼女に銃口を向け、警戒を示した。
ブルシモは銃を向けられて一瞬たじろいだが、姿勢を正し、大きな声を出す為に息を吸い込んだ。
「コルテロ様、それ以上は・・・」
「ブルシモ、今からする話は俺たちを含め、この場にいる全員の命に関わる話だ。
命が掛かっているからこそ、経緯を説明し、納得してもらう必要がある」
「・・・っ」
ブルシモは何か言いたげに口を開けたが、その口から言葉が発されることは無かった。
彼女は諦めた顔でゆっくり頭を振ると、右手で胸元のペンダントを握りしめた。
コルテロは話を続けた。
「王女の依頼はこうです。
【不治の呪病に罹った王女の身柄を『湖島の魔女』のところまで無事に届ける】
恐らく貴族間の権力抗争の中でインパジエンザ公共々、ロッソ家に命を狙われたのでしょう。
そして、俺が滞在していた北部草原基地にシリエジオ王女が来られた際、明らかに計画された襲撃を受けました。
ロッソ家は呪病に罹った王女が『湖島の魔女』に助けを乞うために俺の元を訪れること、そして俺が3日前に北部草原基地にいることを知っていました。
・・・そう、情報がリークされていたんです。
皆さんが知っての通り、ここフィオリレ市はロッソ家の権威が強い街です。
市に深い根を張るロッソ家の人間と大陸中の物流を担うアッセロ運送会社の副支部長に繋がりがあっても不思議はありません。
それに・・・パラディーゾ副支部長、シエロ支部長はどこにいらっしゃるんですか?
あなたとシエロ支部長との間に溝があるという話はアッセロ運送会社内では有名な話です。 支部長は今回の件をご存じなんですか?」
コルテロは自身の考えを全て言葉にし終えると、副支部長の言葉を待った。
パラディーゾ副支部長はコルテロの話を腕を組みながら、ドアに背をもたれて聞いていた。
「話は以上か? コルテロ」
パラディーゾはおもむろに一歩前に出ると、自身の懐に手を滑りこませた。
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