第56話 【4日目午後】 疑いと撃鉄

(港の倉庫・・・・確かアッセロ運送会社が管理をしている倉庫もあったはず。

ラーメの逃走を助けた奴がアッセロの人間なら、自分たちの拠点に一旦匿うのは自然か)


「・・な、なあ? どうする?

今から港に向かっても、いくら俺たちの足でも夜になっちまう。

その間にラーメはトンずらしちまうぞ」



男は吸い終わった煙草を地面に捨てた。

吸殻を踏み消しながら、男は不安を口にする部下に対して冷徹な笑みを向けた。



「ラーメは俺が仕留める。

そのあとはお前の好きにして構わない」




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「おっおうじょさまあああ!?」



パラディーゾ副支部長の言葉に、近くで話を聞いていた職員たちは騒めいた。

アリアは顔の近くで両手をわなわなと震わせている。



「シ、シリエジオ殿下!  先程はとんだご無礼を!

ちょっとコルテロ!  この子が王女様なんだったら早く言ってよ!」


「おい、このガリーナ(雌鳥)。  人の話を聞け。

この娘は王女じゃない。

それでコルテロ、王女は今どこに?」



副支部長は腕を組んだまま、コルテロに鋭い視線を向けた。

コルテロはその瞳から敵意を感じなかった。

むしろ、現状の駒の配置を凝視し、不利な状況を打開する一手を考えるチェスの棋士のようだと思った。



「・・・町の北東、郊外の林のそばです」


「ガバリエーレもそこにいるのか?」


「?!・・副支部長、なぜ彼のことを?」


「・・・なるほど、分かった。  

『トリ2羽と鳥乗できる人間1人』だったか?


良いだろう、許可する。

物資の補充もこの倉庫にあるものを好きに持っていけ。

書面の方も私が片付けておく。

アリア、手を貸してやれ」



そう言い終えると、副支部長は服装を整えながら踵を返し、事務所の扉に向かって歩き出した。

その背中にアリアが声をかけた。



「ちょっとラディ!  あなたが説明下手なのはいつものことだけど! 

今回ばかりはちゃんと説明して!

これはどういう状況なの?!

シリエジオ王女って? ガバリエーレって? コルテロが受けてる依頼の詳細は? コルテロを襲っててた奴らって何者なの?」


「うるせぇな。  時間がないんだ。

そんなものは出発の準備をしながらコルテロに聞け」



副支部長は顔を振り返えることすらせずにそう吐き捨てると、事務所の扉に手をかけた。



「パラディーゾ副支部長!」



コルテロはその名を呼ぶと、小銃を手に取り、ボルトを引いて撃鉄を起こした。



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