第54話 【4日目午後】 パラディーゾ副支部長

コルテロたちを乗せた(吊るした)トリは、ものの数分でフィオリレ市南西の港に到着した。

そこはアッセロ運送会社フィオリレ支部の倉庫がある場所だった。

倉庫では数人の職員がコルテロたちを出迎えてくれた。



「アリア、恩に着る。

正直、俺だけではあの状況を切り抜けられなかった。  ありがとう」


「いいって、いいって!

・・・それに、礼を言うならラディに言ってよ。

私に煙幕弾を持たせてくれたのも、この倉庫にコルテロたちを匿うための準備をしてくれたのもラディだし!」


「そうか・・・その副支部長はどこに?」


「確か、ここで待機しているはずなんだけど・・・・」



アリアが近くにいる職員たちに尋ねようとした瞬間、倉庫内の事務室の扉が勢いよく開いた。

中から出てきたのは痩せた中年の男性だった。

運び屋の服を着ているが、首に深紅のスカーフを巻いていて、眼鏡をかけ、神経質そうな顔をしている。


周りの視線が集まる中、男は懐中時計を取り出して時刻を確認しながら、早歩きでコルテロたちに近づく。



「アリア・・・このガリーナ(雌鳥)・・・予定より34分遅れている。

何をグズグズしていたんだ」



男は苛立った口調でアリアに問いかけた。



「いやいやラディ! 

この広いフィオリレ市でコルテロを探すの大変だったんだから! 

それにコルテロはよく分からない連中に襲われてたし!」


「はあ・・・これだから女は・・・いいか、まず・・・」



コルテロは2人の会話に割って入った。



「パラディーゾ副支部長、お久し振りです。

まず、アリアを使いに寄越してくれたおかげで命拾いしました。

感謝いたします。


支部長がどこまでご存じか知りませんが、俺は今急ぎの仕事の最中なんです。

すぐにトリ2羽と鳥乗できる人間を1人借りたいです。

あと、アッセロ運送会社に指名手配が出ていて・・・」



パラディーゾ副支部長はコルテロの言葉を手で制した。



「ああ、煩い煩い。

お前にいちいち言われなくても現状は把握しているし、謝礼の言葉も必要ない」



副支部長はコルテロとアリアの後ろに控えるブルシモに視線を向けた。



「シリエジオ王女は『朝日に照らされた雪の如く麗しい銀色の御髪』をお持ちと聞き及んでいるが・・・そのブロンドの娘は誰だ?

シリエジオ様はどこにいる?」



近くで話を聞いていた職員たちに動揺が走った。

アリアも目を見開いている。





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