第52話 【4日目午後】 飛び移れ
見上げると、頭上で飛空士を乗せたトリが1羽、低空を旋回していた。
「・・・おい、あの馬鹿・・・・・」
再び背後から殺気を感じ、飛んでくる投剣を数発弾いた。
敵の攻撃を防いだ直後、またも頭上から笛の音が響いた。
「・・あああもう・・・・仕方ない、他に手は無いしな」
コルテロは自分の笛を懐から出すと、その場で高らかに鳴らした。
すると、それまで地上を様子見するようにゆったりと旋回していたトリが軌道を変えた。
「2つ前の建物の扉に行くんだ!」
「ハア、ハア、ハア・・・え?どうして?」
「いいから早く!」
コルテロは威嚇のために、背後に向けて数発発砲した。
その間にブルシモはコルテロが指示した扉の前に着いたが、もちろん扉には鍵がかかっていて開かない。
「コルテロ様、鍵が・・・」
「少し下がれ」
コルテロは扉の施錠部分を撃ち抜いて壊すと、扉を蹴破って中に入り、近くの階段を指さした。
「あの階段を上って屋上へ。 急ぐんだ!」
ブルシモは頷き、すでに鉛のように重たい足を懸命に動かして階段を駆け上がった。
階段を一段上がるごとに息が上がり、酸欠で視界が段々ぼやけ、思考が鈍くなる。
途中でこの建物の人間と何人かすれ違ったが、『失礼します!』と顔も見ずに叩きつけるように言って通り過ぎてきた。
屋上に着くころには、息も絶え絶えで壁に寄り掛からないと立っていられない状態だった。
「・・ハア、ハア、ハア・・・・なんで・・・・なんでこの町の建物は・・・・ハア、ハア・・・・こんなに・・ハア、ハア・・・・高いわけ・・・・」
コルテロは屋上に着くと、もう一度笛を鳴らした。
するとコルテロはブルシモの手を引いて屋上の縁に移動した。
眼下には今まで通ってきた路地が見える。
「321であれに飛び移る。 タイミングを間違えるなよ」
見ると、先程まで近くを旋回していたトリがスピードを上げて左から突っ込んできている。
「あれにって?! コルテロ様?! 屋上に昇った理由って?!?!」
「ちゃんと足を掴まないと、そのまま落ちて死ぬから気を付けろ」
「ああああ! やるしかない!」
「来たぞ・・・3・2・1!」
2人は中空に身を投げ出し、頭上を通過するトリの二足をそれぞれが掴んだ。
人間2人分の重量がいきなり増えて、トリは一度ガクンと速度を落として下降したが、背に乗る飛空士の勇ましい掛け声とともに大きく羽ばたいて上昇を始めた。
「おうわわわわわわ!!!
無理無理! 危ない死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!!!」
その瞬間を狙いすましたかのように、建物の1つから投剣が飛んできたが、コルテロは器用に片手でトリの足を掴んでぶら下がり、もう片方の手で下から飛んでくる投剣を小銃で振り払った。
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