第49話 【4日目午後】 T字路の攻防3

「悪いな、兄弟」



コルテロはピオンボの右袖を掴み、乱暴に引っ張った。

体重を乗せて振り切った斧を空振りさせられて体勢が前方に崩れた男は、さらにコルテロに引かれて前につんのめった。

コルテロは前に出ようとする右足が地面に着く直前に、男の右足を蹴り上げた。


男の身体は宙に舞った。

コルテロは受け身を取らせないように掴んだ右袖を真下に引き落した。

バキ!っと嫌な音を立てながら、男は頭から石造りの地面に落下した。


男はそのままだらりと四肢を地面に投げ出すと、それっきり動かなくなった。

コルテロはピオンボが起き上がる気配がないことを確認すると、急いでブルシモを背に担ぎ上げた。



「俺の声が聞こえてるかどうか知らないが、助けるんだから『殿方が若娘の身体にどうたら』っていうのは後にしてくれよ」



コルテロはブルシモを背に抱えたまま走り出し、すぐに道幅の狭い通路に入り、やがてフィオリレ市の路地の暗闇へ姿をくらませた。




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ブルシモを担いだコルテロが最初の小路を曲がった瞬間、アルジェントと呼ばれた男はようやく鬱陶しい煙幕から抜け出した。


男が目にしたのは、辺りに滴った血の跡、白目を剥いて倒れている仲間、そして見覚えのある戦斧が柄が折れた状態で地面に突き刺さっていた。



「役立たずが・・・・ろくに時間稼ぎもできねえのか!

おい、早く起きろ木偶の坊」



地面に寝そべったまま起きる気配がないことに苛立った男は、舌打ちをしながら寝ている男の腕の傷口に軽く剣を突き立てた。

その痛みに反応して、男はのそのそと目を覚ました。



「イテテテ・・・・あれ? ラーメの野郎はどこ行きやがった?」


「俺が聞きてえよ。  しかも貴様、また武器を壊したな。

今月で3本目だ。  次は無いからな」


「へえへえ。  あイテテテ!

くそぅ・・・ラーメのヤロー、まだあの『力』使えたのか」


「早く止血しろ・・・・お前がやられるということは、そうだろうな。

どうやら勘は鈍っていないらしい。

だとすると貴様とラーメは相性が悪い。


・・・お前はこのまま表のアッセロ運送会社の建物を見張れ。

連中が妙な動きをし始めたら、あとを付けろ。

もしラーメかガバリエーレに合流したら知らせるんだ」


「・・・りょうかい」


「護衛に隙があったら王女を殺せ。  いいな?」


「あいあい、了解です」


「・・・頼んだぞ。  分かっているとは思うが、今回の仕事をしくじったら、俺たちはオウロに殺されるんだぞ」


「・・・フン」



男は嫌そうに鼻を鳴らすと、路地の闇へと消えていった。

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