第48話 【4日目午後】 T字路の攻防2
「今だ。 反対側に走れ」
コルテロはブルシモを立たせながら、声を落として指示した。
「絶対に止まるな。 俺を信じてまっすぐ走れ」
ブルシモは走ろうと懸命に足を動かした。
しかし、震える足は上手く力が入らず、動きが木製人形のようにぎこちない。
見かねたコルテロはブルシモに肩を貸した。
「ごめんなさい。 足が動かなくて・・・」
「アルジェントの殺気に圧されたか。
心配するな、お前さんも姫様と同じく俺の護衛対象だ」
2人は煙が満ちた路地を壁伝いに進んだ。
歩を進めるにつれて、ブルシモの身体の感覚も戻ってきた。
「ありがとうございます。 そろそろ自分で・・・」
ブルシモが言い終えかけたとき、煙幕が途切れ、目の前に視界が広がった。
煙幕の外には、先ほど左側に立っていた男が待ち構えていた。
男はコルテロたちを目に留めると、迷うことなく銃口を向けた。
「走れ!」
コルテロはブルシモを突き飛ばした。
次の瞬間、銃声が響いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ブルシモは状況が理解できなかった。
今どこにいるのか。
自分が今、何をしているのか。
周りの音がしない。
右側の頭が熱い。
ここは宮殿じゃない? 一体どこだろうか?
そうだ、シリィのお世話をしなくちゃ。
いや違う・・・家族を守らなければ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
男の放った銃弾はブルシモの右耳の上の側頭部を掠めた。
コルテロは懐のナイフを男に投げた。
ナイフは男の腕に刺さり、男はうめき声をあげた。
ブルシモはその場に膝をつき、ぼんやりと地面を眺めている。
見る限り、深手ではない。
恐らく、銃弾が頭を掠った衝撃で軽い脳震盪を起こしているのだろう。
呼びかけてもブルシモに反応がない。
男は腕に刺さったナイフを引き抜くと、背中に担いだ武器を手に取った。
それは刃の大きさが牛の頭ほどもある戦斧だった。
男は『2人同時に叩っ切ってやる』と言わんばかりに、戦斧を頭上に振りかぶった。
コルテロは立ち上がる様子のないブルシモを一瞥すると、男に向き直った。
ローブから覗いた顔は、少し更けていたが、やはりピオンボだった。
ピオンボは顔を真っ赤にしながら、力任せに戦斧を振り下ろした。
コルテロはその場から動かなかった。
袈裟に振り下ろされる戦斧が直撃する寸前、コルテロは右手の甲で戦斧の刃の側面にそっと触れた。
戦斧は流れるように軌道を変え、岩と金属がかち合わされる鈍い音を立てながら、コルテロの足元の地面を割った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます