第47話 【4日目午後】 T字路の攻防

「違う、これは・・・」



剣から伝わる違和感に気付いた瞬間に、男は剣を引き抜きざまにそれを蹴り飛ばした。

男は人ではないそれに警戒して距離を取ったが、何も起きる気配は無かった。



(ッチ、ただのダミーか)



通路に銃声が響いた。

1発、2発・・・合計3発。



(3発とも位置が違う・・・ラーメと2人が発砲したのか)



男は周囲に警戒しながら正面へ駆けだした。

すぐにコルテロが背にして立っていたレンガの壁が見えてきた。

コルテロと女の姿は見えない。


男はふと何かが気になったように、一瞬壁を見た。



(待てよ、この壁・・・そういうことか。

あのクソガキ、小賢しい真似を。

まあいい、煙幕も少しづつ薄くなっている。


左右どちらに逃げたとしても、2人のどちらかと交戦している間に背後に忍び寄り、今度こそ心臓を刺し貫いてやる)



男が待ち構えていると、男から見て右側から、ゴンッと岩に金属を叩きつけたような重い音がした。

男はすぐさま右に駆けだした。

そして最初の音と続いて同じ位置から、バキッという何かで石を殴ったような音がした。



(ピオンボの方だな。

あの木偶の坊、せめて時間は稼げよ)



段々と煙幕が薄れ、視界は広がり始めている。

男は気配を消し、剣を構えて進んだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




時は数十秒前に遡る。


コルテロの合図で通路に煙幕弾が撃たれ、視界が白に染まり、ブルシモはパニックになった。



「え・・・何・・どうしよう?・・・あ、合図・・でも・・・」


「落ち着け、お前への合図はまだだ。 悪いが借りるぞ」



コルテロは返事も待たずに、懐から取り出したナイフでブルシモが着ているローブの前紐を切り、瞬く間にブルシモからローブを剝ぎ取った。

ナイフを口に咥えながら、手早くそのローブをシリエジオ王女の為に買った品物が大量に入った紙袋に被せ、正面側に勢いよく投げた。


ブルシモはコルテロの行動に困惑した。



「あの?・・・一体?・・私のローブ・・・・」


「えふえいはあほは(説明は後だ)!  ふへほ(伏せろ)!」



コルテロはブルシモの襟首を掴んだ。

彼女は無意識に抵抗しようとしたが、足首に何かが触れた感触がした次の瞬間には地面に倒れていた。


コルテロはナイフをしまい、体勢を低くして背後の壁に手をつきながら狙いを定め、右側の通路に向かって発砲した。

一拍遅れて、体勢を低くしたコルテロたちの頭上を弾丸が通り過ぎる音がした。

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