第46話 【4日目午後】 囮
「例え万に一つ、奇跡的にこの場を切り抜けられたとしても、お前たちは決して『湖島の魔女』の元へたどり着くことは出来ない。
無駄に意地を張ってないで、俺たちに下れ、ラーメ・・・・いやコルテロ!」
「・・・・」
「そうか・・・・残念だ」
話していた男は腰の剣をゆっくりと引き抜いた。
それを合図に他の2人も、それぞれ拳銃を手にコルテロたちとの距離を詰めだした。
コルテロは肩に下げていた銃を手に取った。
(まだだ・・・まだ遠い・・・あと2歩)
男たちはコルテロに近づき・・・そして銃の必中距離の1歩手前でコルテロに銃口を向けようとしたその瞬間だった。
「いまだ!」
コルテロは叫び、銃を持ったまま右手を勢いよく天に突き挙げた。
すると、数発の発砲音とともに、上空から煙幕弾が降ってきた。
途端に狭い路地は灰色に満ち、視界が消えた。
明らかに何者かに合図を送る行動に、男たちはすぐに周囲を警戒したが、瞬く間に視界が失われたせいで動揺が彼らの中に走った。
しかし、ブルシモと会話し、コルテロに『アルジェント』と呼ばれていた男は至極冷静だった。
(煙幕・・・上空からということは、鳥乗した仲間・・・アッセロ運送会社の連中か。
街に足を踏み入れる前に、すでに奴らと連絡を取っていたという訳か。
しかし、いくら視界が失われていても、この狭い通路だ。
俺が今立っている道の脇をすり抜けようとしても、俺が気付かないはずがない。
そんなことはラーメも分かっているだろう。
ラーメが逃げるには俺のいない左右の道しかないが、左右の道にはそれぞれあいつらがいる)
男は煙幕の中、コルテロが立っていた辺りへ駆けだした。
(右か左か、必ず交戦になる。
騒がしくなった方へ駆け、背後からコルテロと女を斬ればいい)
そう考えていると、男の正面から黒い人影が迫ってきた。
男はその人間が黒いローブを纏っていることから、すぐにそれがコルテロの連れていた女だと分かった。
(周囲に人の気配は・・・ないな。
ふん、女を囮にして左右どちらかからにげるつもりか。
まあいい。 俺の話を聞いたこの小娘も遅かれ早かれ始末する必要がある)
男はブルシモの心臓を剣で貫いた。
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同時刻、ラゴ市に近い大陸山脈上空にて、南に向かう武装した一団がいた。
彼らの装備にはロッソ家の臣下であることを示す刻印が刻まれていた。
陣を組んで飛行する約100騎の一団の中央には、ピシリと整えられたブロンドヘアが特徴的な、背の高い男がいた。
「さて、もうすぐ一仕事だな。
ドゥーラたちの方は上手くやったかな?」
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