第45話 【4日目午後】 指名手配

「返事がノーなら、今ここでお前も小娘も殺す。


3対1な上にお前にはお荷物がいる。

足を洗って運び屋なんかやっていたお前と違って、『矛』が解散したあの日からもずっと俺たちは闇稼業で生きてきた。

賭けにもならない、つまらない勝負だ。

利口になれ、ラーメ」


「・・・・」



コルテロは黙り続けた。


ブルシモは再び訪れた張り詰めた緊張感に動悸がした。

胃の中を火かき棒でかき回されたみたいに気分が悪い。


男は溜息をついた。



「・・・これはできれば使いたくないカードだったんだが・・・お前は知らないかもしれないが、『英雄コルテロ』は先ほど、正式に王国中に指名手配が出された。

罪状は『インパジエンザ次期侯爵の殺人未遂とシリエジオ王女の拉致監禁の主犯』だ。

ガバリエーレ近衛団大隊長とその配下、アッセロ運送会社もコルテロに加担したとして、同様に指名手配が出されている」



ブルシモは声にならない悲鳴を上げた。



(そんな・・・どうして・・・)





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同時刻。

場所はフィオリレ市の大通り。


国随一の劇団の明日の公演開始を知らせる、明るく賑やかな音楽と朗々とした声で話す語り手。

それを遮るように武器を携えた集団が現れた。



「おい! お前たち!!! 

今すぐ止めろ!!  公演は中止だ!!!」


「むむむ?♪

これはこれは♪ 警備隊の皆様♪

よく聞こえませんでしたが、そんなに血相変えてどうされましたか?♪」


「劇団ディヴェルテンテの者たちよ!

明日の公演とこのパレードを中止せよ!! 

理由は演目である・・・」


「ちょいちょい♪ お待ちなされい♪

こちとらアコギな商売でおまんま食べちゃあいるが♪

裏手の仕事はカタギもカタギよ♪


きちっと正規の手続き踏んで♪

団員一人一人の身分証明して♪

高い高い税金も払ったぁてえのに、中止にしろとはどういう了見だい?!♪」



そうだそうだ!っと周囲の観衆は野次を飛ばしている。


警備隊の代表者らしき男が、1つ、大きく息を吸った。



「数刻前、『救国の英雄コルテロ』に対して、国王より指名手配がなされた!

奴は王国の反逆の徒にして、国家の重罪人だ!」


「・・な・・ん?・・・・そんな、馬鹿な・・・」



語り手はそれまで器用に振り回していたステッキを地面に落とした。

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