第43話 【4日目午後】 包囲

「まさかあの『英雄コルテロ』がお前だったとはな。

知ったときは驚いたぞ。

あのオウロの引っ付き虫で無口な小僧が、今や国の大英雄様で、しかも女連れでお買い物ときた」



話をしているのは正面の道に立つ男のようだ。

左右の2人は口を開かない。


正面の男も左右の2人も黒いローブを被っているので、顔が分からない。



「左はピオンボ、右にいるのは・・・メルクーリオか。

再会は嬉しいが、何のようだ?」


(ピオンボ〈鉛〉、メルクーリオ〈水銀〉、今度は金属の名前?)


「おっと、すまない。

感動の再開が嬉しくて、本題を忘れていた。

すでに知っているとは思うが、今お前が護衛しているシリエジオ王女の命をロッソ家は狙っている。


そして、今我々はロッソ家に雇われている。

この意味が分かるな?」


「なんで3大侯爵貴族が王族の命を狙う?」


「さてな、貴族同士の意地汚い権力争いに興味は無い。

貴族や大商人、奴らは表では聖人みたいな面を掲げているくせに、裏では悪魔でもビビッて尻尾を巻いて逃げ出すようなことを平気でしやがる。

そこのところは俺たちが一番よく知っているだろう、兄弟?」


「・・・・」


「話は簡単だ。

王女の身柄を引き渡せ。

お前も素性を明かして、ロッソ家のお偉いさんに頼みこめば命ぐらいは助けてくれるかもしれない」


「・・・・」



コルテロは押し黙った。

3人は少しずつ、少しずつにじり寄って包囲をの輪を狭めている。



「もしかして金の心配をしているのか、ラーメ?

なら、王女護衛の依頼金の倍の額を出そう。

今の雇い主は話の分かる方だ。

私から融通してやろう」


「・・・・」



ジリジリと歩み寄る3人。


高まる緊張感。


ブルシモは耐え切れず、口を開いた。



「あ、あなたたち・・・一体、何者なの?

王家の人間の命を狙うなんて・・・・命令したロッソ家もそうだけど、それを実際にやろうとしているあなたたちもイカれてるわ!

コルテロ様、お知り合いでしたらお願いですから彼らを説得してください!」


「・・・・」


「・・・ラーメ、その小娘は何も知らないようだな」



会話をしていた男は頭のローブを下ろした。

男は白髪交じりの中年の男性で、首は筋肉で太くなっており、額には大きな傷跡があった。


男の顔を見た瞬間、ブルシモは無意識に後ずさった。

後ずさった足が背後の壁に当たり、逃げ場がないことを本能的に理解した。

自分の心臓の鼓動が耳にドクドクと響き始めた。



「丁度良い。

おいラーメ、お前たち、武器から手を放せ。

ラーメに考える時間を与えてやる。


小娘、少し話をしてやろう。

『救国の英雄 コルテロ』と我々の過去をな」

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