第33話 【4日目早朝】 4人旅
コルテロとシリエジオ王女、そして大隊長と侍女をそれぞれ乗せた2騎は未明にアッセロ運送会社ラゴ支部を出発した。ラゴ支部長は地上から2騎の姿を小さな点になるまで見つめていたが、やがて空に背を向け、自分の仕事場へと足を向けた。
支部長として、これからやることが山積みだ。いつまでも心配ばかりしていられない。
今から取り掛かる仕事に向けて、景気付けに派手に首をコキコキと鳴らした瞬間、1人の職員が血相を変えて駆け寄ってきた。彼は今年入ったばかりの新入りで、まだ掃除や雑用ぐらいしかやらせていない若造だ。
「おう! どうした? そんなに慌てて? てめえのションベン漏らしたのがバレちまったのか?」
「支部長! 大変です! 実は・・・」
「・・・なんだと!? そいつは不味いな・・・おい、伝書鳩を用意しろ! 大至急だ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
コルテロたちはやや高度を上げて、まだ暗い未明の空を飛行していた。夜空には月はおろか、星すらも見えない闇が広がっていた。どうやら雲が出ているらしい。雨が降らなければいいのだが、と考えながらアソの手綱を握るコルテロの前をホダカに跨る大隊長が飛んでいた。
複数で飛行する場合、必ず縦に列を作って飛んだ方が良いとされている。なぜなら、先頭の1羽が風よけになることで、後列のトリたちは最小限の空気抵抗で飛行することができるからだ。先頭を交代しつつ飛べば、トリと飛空士の疲労を分散することもできる。なので、1羽より2羽、2羽より3羽の方がより長く速く飛ぶことができる。正直言って、コルテロにとって大隊長の存在は有難かった。
自分の前を飛行する大隊長と侍女の後姿を見て、コルテロは「上手いな」と思った。大隊長ではなく、後席の侍女の方だ。大隊長の手綱は特筆立てて悪いわけではないが、はっきり言って平凡だ。対して、侍女の方が明らかに鳥乗に慣れている。
しっかりと重心は落ちている上に、トリの羽ばたきの負担にならないように上半身は安定して姿勢良く、下半身は柔らかく使って衝撃を逃がしている。命綱は決して握りしめず、軽くロープを指に引っ掛けるようにして持っている。
正直、自分の後ろで固まっているだけの姫様には見習ってほしかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます