第28話 【3日目午前】 ラゴ支部長の気遣い
「さて、2人のコルテロとの面識も確認が取れたことだし・・・ガバリエーレさんだっけ? 話を聞かせてもらうよ。 夜中に来た伝書鳩を読んで、こちとら目ん玉飛び出たんだ。 コルテロ、治療しながらで悪いが至急状況を確認したい。 北部草原基地で何があった?」
コルテロは銃弾が掠めた右肩の治療を受けながら、大隊長と一緒に支部長に事の顛末を話した。
コルテロは大隊長と侍女がほとんど負傷をしていなかったことに驚いた。『王国軍近衛団第2部隊大隊長ガバリエーレ』と言えば、王国軍関係者なら一度は聞いたことのある肩書と名前だ。市井の出ながらその類稀な体格と実直な忠誠心によって、一般兵からコツコツと階級を上げ、王国軍の花形である近衛騎士団の大隊長まで上り詰めた叩き上げ。質実剛健な軍律の鬼と評される傑物と噂だった。
とはいえ、敵の勢力がコルテロの作戦で分散していたかつ、仮に部下にかばってもらったとしても、多勢に無勢のあの状況でお荷物にしかならない侍女1人を背に乗せて、ほぼ無傷で生還できたのは奇跡だ。ガバリエーレ大隊長は噂以上に技術と戦闘勘に長けた人物なのかもしれない、とコルテロは考えていた。
「そうか・・・北部基地でそんなことが。 モンタグナ会長はそう簡単に死ぬような人じゃないけれども・・・分かった。 ありがとう、ガバリエーレさん、コルテロ。
これから至急、会長が逃げたっていう大陸東側の基地と連絡を取って見るよ」
大隊長は支部長に『大隊長たちの主が湖島の魔女と会うことが目的であり、そのためにコルテロの案内が必要』ということは伝えたが、大隊長と姫様の素性は伏せた。しかし・・・
「ガバリエーレさん、あなたの着ているその装備。 ガバリエーレ・・・近衛騎士団のガバリエーレ? それじゃあ、あなたの主・・・さっきのお嬢ちゃんはまさか・・・」
そらきた。案の定、大隊長は『しまった!』という顔をしている。コルテロが適当な言い訳を話そうと口を開いたが、支部長がそれを制した。
「いやいい。 何も言う必要はない。 すまない、興味本位で口に出しただけだ。 このガバリエーレさんの依頼はお前が受けて、会長も許可を出したんだろ? なら俺が口を挟むのは余計なおせっかいだ。
あと4日でオウロ島に行くなら、早朝には出発る(でる)だろ? 準備は私たちでやっておくから、お前は今は休め。
ガバリエーレさんも今は休んで下さい。 今後のことはまた後で話しましょう」
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