第26話 【3日目朝】 ゆっくりお休み

「じゃあお前、なんであんな女と一緒にいるんだ?」


「分からないです。 そうですね・・・何かこう・・・自分と同じ気がするんですよ、エフィは」




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そうだ。 かつて軍にいたとき、俺は同僚にそう答えたのだ。



一瞬で視界が切り替わる。俺は今トリの背に乗っている。目の前には何故か銀髪になったエフィ・・・いや違う王女だ。 そう、彼女はソレニーチャ王国のシリエジオ王女で、俺は彼女を『湖島の魔女』の元まで送り届けなければならない。


ようやく意識が現実に戻ってきた。



「どうしたコルテロ?  彼女はどこか怪我をされているのか?」



支部長が声をかけると、姫様は慌てて自由になった方の手でフードを被り直した。右頬の痣は支部長が彼女から見て左側にいたので見えていないはずだ。



「いえ、何でもありません。 ただ、昨日は空戦をした上、そのまま不眠でここまで飛んできたので疲れているだけです」


「ほう? お前の口からそんな言葉が出るのは珍しいな。 昨日空戦した相手はそんなに手強かったのか?」


「そんなところです」


「・・・まあいい。 早く彼女を下ろしてやれ。 色々と細かい事情を聴きたい」



コルテロは彼女の残りの指をロープから自由にしてやると、改めて彼女がアソから降りるのに手を貸した。


姫様は地に足を付けると、糸を断たれた操り人形のように地面にへたり込んでしまった。転ぶ姿を見られたのが恥ずかしいのか、目深に被ったフードを無理やり引っ張って顔を隠しながら立ち上がろうとするが、上手く足に力が入らないのか、打ち上げられたイルカのように地面の上をのたうち回っている。



「ハハハハ! お嬢さん! トリに乗ったのは初めてかい? おい誰か!!! 女手を呼んできてやってくれ! 飛びっきり礼儀作法に詳しい奴をな!!!


お嬢さん! これからオウロ島まで行くんだろう? そんな調子じゃあ、着いた頃には腰が使い物にならなくなっちまうぞ! ナァハハハハハ!!!」



ボスはちゃんと伝書鳩に彼女の素性を書いていたのだろうか? いや、やめておこう。 支部長も知らない方が良いだろう。


見かねたコルテロが王女を助け起こしていると、支部長はアソに視線を向けた。



「うちのタグが付けられているが、初めて見る顔だな。 名前は?」


「アソと言います。 一昨年に生まれた子らしいです」


「他のトリはどうした? もっと速いのがいただろう?」



俺は視線を逸らした。



「残念ながら」


「・・・そうか」



支部長はアソの首元を撫でた。



「若いのによく頑張ってくれた。 今はゆっくりお休み」

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