第8話 【2日目午前】議論
「迎え撃とう! ここいらは俺たちの庭だ! 地形も風も知り尽くしている上に、敵は全員鳥乗している。 丘じゃ敵わねえかもしれねえが、空なら俺たちの土俵だ! アッセロ運送会社を敵に回したことを後悔させてやる!」
目を真っ赤にしながらそう叫んだのはベントだった。ここは2つある大型厩舎のうちの燃えていない方の中だ。襲撃の知らせを受けた俺たちはとりあえずここに避難してきた。ボスとベントたち運び屋、雑用係、飼育係を含めた会社の職員たちが約50人、そして大隊長以下の騎士たちと侍女が10ずつで合わせて約20人、合計70人ほどが身を寄せていた。その場の騎士たちはほとんど全員が負傷者だった。 動ける騎士は大隊長の命令で、我々が脱出する時間を稼ぐために敵団に打って出ていた。
「愚か者が! 相手は手練れの飛空騎士の一団だ! 一介の飛空士が束になっても手も足も出ない! 貴様らが無駄死にを望むのは勝手だが、そのあとに建物に残った非戦闘員に待っているのは『口止め』という名の殺戮だぞ! ここは動ける人間とトリ全てで陣形を組み、この場から脱出を試みるべきだ!」
興奮したベントにそう告げたのは大隊長だった。確かに、大隊長の言っていることは一理ある。 ベントの『トリたちの仇を討ちたい』という気持ちはわかる。 だが相手は騎士団、素人が勝てる相手ではない。
とはいえ籠城も現実的ではない。武器が少ない上に、そもそもここは城塞ではなく、商いのための建物なのだ。『逃げるしか選択肢がない』という点では俺も大隊長に賛成だった。 しかし、
「だんな、そりゃ難しいと思うぜ」
声をかけたのはボスだった。
「確かに現状、迎え撃とうが、籠城しようが待ち受けるのが死。 ならトンずらここうって考えは分かる。 だが、だんなが言うように相手は『訓練された騎士団』なんだろ? いくらだんなたちが護衛したとしても、ここには俺の部下とあんたの手下、合わせて70はいる。 残っているトリの数を考えたとしてもギリギリだ。
限界まで人を乗せて鈍速で飛ぶトリの集団を戦いのプロ達から、あんたら手負いの騎士10足らずで守り切れるのか? それに、はっきり言うが・・・まだいるんだろう?・・・ネズミが」
ボスが周りにいる人間を睨んだ。影武者の毒殺、厩舎の火事、そして何よりもこの敵襲が、敵のスパイがこちらの手勢の中に潜んでいることを示していた。
先ほど、騎士の1人がそのスパイであることが判明したが、彼1人でこれら全ての犯行を行ったにしては、いくら何でも手際が良すぎた。
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