第7話 【2日目朝】 相棒たち
「周囲を警戒していた者からです! 追手の手勢は100騎以上! 装備からロッソ家の傘下でほぼ間違いないとのことです! 敵到着まで残り約15分!」
「クソ、こんなにも早く追い立ててくるとは!」
どういう状況か、イマイチ掴めなった。ロッソ家は政治に無関心なコルテロでも知っているようなこの国の侯爵貴族の家名だ。大隊長の一団は『近衛騎士』、つまり王族を中心に高級貴族と王族、そしてそれらに連なる人間を守るのが仕事のはずだ。 その一団が『主』を連れて、この国随一の大貴族に追われている?
「大隊長・・・あんた王族を誘拐でもしたのかい?」
「っつ!? 王国軍近衛団所属第2騎士部隊大隊長ガバリエーレ! お仕えしている我が国王に誓って! 断じてそんなことはせん! 戯言を言っていると叩っ切るぞ!」
大隊長は目を瞑り、大きく深呼吸をした。
「・・・悪いが、事情が変わった。 ここへ向かっている軍勢の狙いは我が主だ。 我らは主君を守るのが義務だ。 しかし、多勢に無勢な上に、我が団には負傷者も多い。 出来るのはせいぜい時間を稼ぐことぐらいだろう。 だから・・・ん? 何だこの匂いは?」
今まで気付かなかったが、確かに何かが焦げるような匂いがしている。さらに、ごうごうと何かが勢いよく燃えている音も聞こえる。
急いでテントの外に出た。 すでに外は太陽がその全身を見せていて、世界は明るくなっていた。 会社にはトリたちを管理するための大型の厩舎が2棟あるが、そのうちの1つから黒煙が立ち込めていた。
コルテロは走り出した。
「コルテロ!」
「大隊長! 非戦闘員を建物の中へ! 草原のど真ん中のテントよりは安全だ!」
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コルテロが駆け付けたときには、炎はもう手遅れなほど厩舎を呑み込んでいた。ベントたち職員が必死に消火を試みたようだったが、すでに彼らは消火を諦めて手を止めていた。
地面に胡坐をかき、炎を呆然と見つめているベントを見つけて駆け寄った。
「・・・中には?」
「・・・人はいなかったらしい。 ・・・けど・・・ああ!クソ!
アイノ! センジョウ! ヒジリ!・・・一緒に大陸中を飛び回ったのに・・・こんな最期!・・・あんまりだ!」
ベントは片手で顔を覆っている。その肩は小刻みに震えていた。普段明るい彼に対して、俺はなんて言葉を掛ければいいか分からなかった。
「・・・ベント・・・ここは危険だ。 とにかく、移動しよう」
こんな時、気の利いた言葉が出てこない自分が恨めしくなる。
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