第5話 【2日目朝】 依頼了解

「中央のやつらは偉そうなことばかりほざく子犬ばかりだが。 だんな! あんたの心意気! 気に入ったぜ!」


「坊主!  休暇中に悪いが、仕事だ。  飛べるな?」



ボスに肩を支えられて立ち上がる大隊長の顔は嬉しいような、気が抜けたようなよくわからない顔をしていた。



「了解、ボス」


「ありがとう・・・ございます。 ・・・かたじけない」


「おい、だんな! 泣くのはだんなの内緒の主を助けてからにしな。 坊主以外に何か欲しいものはあるかい?」


「そうだな・・・糧秣と水と弾丸・・・それと鳥乗できる者を5人ほど」


「よし来た!  おい坊主! 7日で『湖島』に行くなら、今すぐ出発しなきゃならん。 動ける人間全員で準備をさせろ! この騒ぎの中でもまだ寝てるバカがいたらたたき起こせ!」



ボスが指示を飛ばした次の瞬間、警笛のような甲高い複数の悲鳴が外から聞こえてきた。 それまでわずかながらの希望を手にし、少し頬が緩んでいた大隊長と後ろの部下たちは悲鳴を聞いた瞬間、凍り付いた。


あの声は会社の人間のだれのものでもない。ならば、悲鳴の主は今朝現れた騎士団の人物だ。



「失礼仕る!」



大隊長と部下たちは応接間から、血相を変えて飛び出した。彼らの動きは訓練され、洗練されたものだった。



「坊主! お前も行け!」


「しかし・・・」


「いいから行け! ベントたちには俺が直接伝えに行く!」



頷いた俺は大隊長たちを追いかけるように走り出した。またあの嫌な予感がする。首の後ろがチリチリするような。今度は昨日のよりもずっと強い。


事務所のある建物を出れば、東の空に朝日が顔を出したところだった。会社の敷地内では騎士団と騎士団のトリたちが陣を作っており、その中央には白いテントが建てられていた。それはトリの背に載せきれない荷物を運ぶためのもので、3羽以上でテントを吊るして運べるように作られたものだ。 地面に降ろした際に柱を立てれば即席のテントにもなるので、輸送や旅行時にも重宝されている。 傍らに大きな布が広げられているところを見ると、これは気球で浮かせて、トリに引かせるタイプのようだ。


少し妙だと感じたのは、テントの周りを警護している騎士たちが負傷していたり、装備が破損している者がちらほらいることだ。


大隊長たちが人をかき分け、テントに飛び込むのに俺も続いた。 テント内の人だかりの中心には、白目を剥き、ひきつけを起こした後のような姿で、泡を吐いて倒れている女の姿があった。 女は顔に派手な化粧を施し、首や両手首、十指にまで装飾品を身に着けており、一目で裕福な身上ということが分かる見た目をしていた。

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