第3話 【2日目早朝】近衛騎士団

目の前に人が立っている。彼女は静かに微笑んでいる。


ああ、これは夢なんだなぁとすぐに理解する。

分かっていながら、どこか諦めた気持ちになって彼女を抱き寄せる。

何一つ変わらない感触と温かさ。

そりゃそうだ。

腕の中にいる彼女はただの思い出なのだから。



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プツンッと目の前が真っ暗になった。急に自分の体の輪郭がはっきりする。


遠くの方で、微かにガチャガチャと大勢の人の鎧とトリの轡の音が聞こえる。暗闇に目が慣れるのを待ってから、窓の外の様子を見てみると、空に武装をした騎士が30騎ほど、こちらに向かって来ている。武装はしているが、中には要人の護送用の籠もあるし、襲撃ならばご丁寧にわざわざ篝火を焚いて建物のド正面から固まって来ることもあり得ない。


取り合えず、夜襲というわけではなさそうだが、妙に物々しい。時計の針は3時半を示していた。



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騎士団が到着してすぐに社員の小間使いが部屋に来て、「至急応接室へ」と伝えてきた。寝巻姿に上着を羽織って応接室に向かうと、机を挟んで一方には表情(かお)に怒りを隠しきれずに腕を組んでいるボスが腰を下ろしており、もう一方にはこちらも負けじと睨みを利かせながら、申し訳なく出された茶にも手を付けずにドンと居座る鎧を着た中年の男がいた。男の後ろには同じく完全装備の兵士が4人、手を後ろに組みながら控えていた。



「・・・夜中に呼び出して悪いな・・・・座れ」



こちらの方に見向きもせずにボスは静かに言った。何事なんだ?とは思いながらも、おずおずとボスの隣に腰掛ける。



「私はソレニーチャ王国軍近衛団所属第2騎士部隊大隊長のガバリエーレと申す。未通達の急な訪問に関しては謝罪いたす」


「全くだ。 んで? 要件は何だ? 言っとくが、今俺は気持ちよく寝てたところをたたき起こされたせいで、気が立ってる。 王国軍だろうが、隊長だろうが、下らん話だったら叩き出すぞ」



男の後ろに控える騎士たちの周りの空気がピリリと張り詰めた。しかし、ボスは『下っ端は黙ってろ』と言わんばかりに男に話を促す。



「モンタグナ殿。  重ねて謝罪いたす。 しかし我々とて、致し方のない火急の要件でこちらに参ったのだ。 では、コルテロ殿も参ったので話させていただく」



男はボスからこちらに目線を移し、慣れた所作で簡単な敬礼をした。



「救国の英雄、元小隊長コルテロ。 不治の呪病にかかった我が主を7日以内に『湖島の魔女』のところまで、我々の先導と護衛を命じる」


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