フォーリング・アウト・オブ・ラブ Falling out of Love 💔

第29話 別れのカウントダウン

2018年12月、東京。


真琴と晴夏は2泊3日の北海道旅行を終え、東京に帰ってきた。まあ、今回は旅行と言っても、ある意味悩みからしばらく逃げたいという目的の逃避行だろう。二人にとって何年振りの旅で、いろいろ話し合っていた。そして、お互いへ勇気を付けた。


これからすることはたくさんある。だけど、二人はもう迷わない、そして後戻りもしたくない。


羽田空港に到着後、真琴と晴夏はその場で別々のタクシーに乗り、違うところへ行った。


真琴が向かった先は自宅近くの区役所だった。そこで、ある書類をもらって、そのまま帰った。


自宅前についた真琴はただ立ち尽くしたまま、目の前にある表札を見つめた。


「窪田」


皮肉なことに、この家の家主はいつも留守であり、まるでこの家族の一員ではなかったように、顔すら見えない日々が延々と続いた。深いため息をした後、真琴は門の鍵を開けた。そしたら、ひとりの女の子はものすごいスピードで真琴へ飛びついて、彼女の腰に腕を回し強く抱きしめた。


「ママ、おかえり!」

「ただいま、未希!どうしてママが返ってきたのを分かった?」

「鍵を開けた音を聞こえたよ。ママは一人?ハルちゃんは?」

「ハルちゃんは家に帰ったよ。」

「なんだ~一緒に来てくれると思ったよ。最近うちに遊びに来ないだね。」

「年末年始は忙しいからね、あとで電話をかけて話してもいいよ。」

「やった!ハルちゃんと話せるだ~」


未希の後ろについて来た真琴の母・美鶴みつるは娘と孫娘のやりとりを微笑みながら見ていた。


「真琴、おかえり。」

「お母さん、ただいま。未希はいい子してた?」

「ええ、すごくいい子だよね。」

「ママ、私はおばあちゃんの言うことを聞いたよ。」

「えらいね、未希。さあ、中へ入ろう。」


真琴は未希と手をつないで、リビングへ向かった。そして、自分の荷物を部屋まで運んで、スーツケースから未希と母へのお土産を取り出した。


「これはお母さんへの乾燥ホタテと松前漬けで、これは未希が好きなチョコと前に欲しがっていた絵本だよ。それと、これはハルちゃんからのものだ。」

「あら、晴夏ちゃんが私にもお土産を買ってくれたの?電話でお礼を言わなきゃ…」

「あとかけばいいだよ。未希、ハルちゃんからのプレゼント好き?」

「好き!この色鉛筆は前ハルちゃんに言ったから、まだ覚えているね~」

「ハルちゃんは未希の好き嫌いをよく分かるからね。」


美鶴は今夜静岡へ帰る予定なので、親子三世代は早めに夕食を食べた後、彼女はタクシーで駅を向かおうとした。出ていく前に、美鶴は真琴に声をかけた。


「真琴、もう決心がついたの?」

「はい。」

「どんな決断をしても、私たちは実家であなたたちを待ってるから、すべてが片付けてから帰って来てね。」

「ありがとう、お母さん。お正月に会おうね。」


美鶴を送り出した後、真琴と未希はお風呂に入って、未希の部屋にあるベッドで一緒に横になった。


「ね、ママ。」

「どうしたの?眠くないの?」

「パパはママがいない間帰ってこないだよ。」


これを聞いた真琴は全然驚いていなかった、むしろ帰ってきた方がサプライズだ。


「ママはこの家を出るなら、私も連れって行ってね。」

「どうして急にこれを言い出すの?」

「だって、パパとママは別れるでしょう?」


子供はやっぱり親の異変を簡単に気付くだね。未希はすごく敏感の子だし、尚更それを感じられる。真琴はできるだけ未希にすべてを正直に話そうと決めた。


「未希、ママはもうパパと一緒にいたくない。だけど、離れていても、パパはパパだよ。それだけが変わらないの。」

「そう、分かった。じゃ、私たちは静岡の爺ちゃんと婆ちゃんの家に住むの?」

「たぶんそうだね。未希はどう思ってる?」

「好きよ!だって爺ちゃんと婆ちゃんは未希と一緒に遊んでくれるから。婆ちゃんの料理もおいしいし。でも、姫路の婆ちゃんは?」

「姫路の婆ちゃんと会いたいなら、連れて行くから、心配しないで。」

「ならいいけど。ママが笑えばいい。」

「ありがとう、未希。さあ、寝よう。」


未希を優しく抱きしめて、真琴は娘が寝るまでずっとベッドのそばに座っていた。娘の寝顔はとてもかわいいのに、彼女の父親はこれを見た回数って少ない。遅く帰っても、娘の様子確認しないし、一番最近娘と会って話したのはいつだろう?他人である晴夏さえ、未希と会う回数と一緒に過ごした時間は実父と比べてはるかに上回った。


未希が寝た後、真琴は静かに自分の部屋に戻った。自分のカバンから一つの封筒を取り出して、そこから一枚の書類を取って、デスクの上に広げた。そのまま、ぼっとしてそれを見つめた。


「離婚届」


深く息を吐いた後、真琴はペンを取って、離婚届の必要事項を記入し始めた。夫の部分だけが空白したままだ。


書き終えた時、真琴は携帯からある人にメールを送った。


「大事な話があるから、どんなに遅くなってもいい、明日家に帰ってください。」

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