第25話 星空の下、夢と愛を語ろう

陸翔が選んだキャンプ場は自然豊かなところにありました。


山と森に囲まれて、近くに湖もあった。この季節だと、山と森にある木々は赤、黄色とオレンジ色に染まっていて、色鮮やかな絶景になった。夜になると、周りにビルや人工の光はあまりないため、星を見る場所としては最高だ。紅葉狩りの季節とは言え、キャンプ場の敷地面積はかなり広いし、平日ということもあって、キャンプ客はかなり少なかった。一番近いの四人家族組は二人のところから結構離れたので、まるでキャンプ場を独り占めできた感じになった。


陸翔と晴夏は先にテントを張って、それから荷物を車から降ろしてきた。晴夏は家で事前に準備した食べ物以外、二人はキャンプ場へ向う途中スーパーにも寄って、バーベキュー用の肉などを買った。誕生日祝い用のケーキは晴夏の手作りもので、陸翔が好きな栗をベースにしたモンブランだった。


準備がすべてが出来た時、二人は軽くランチを食べて、それから目の前にいる湖畔で散歩したり、周りの絶景を持ってきたカメラで撮った。今夜は星の写真も撮りたいので、陸翔は実家から専用のカメラを持ってきた。


夕方になったら、二人は夕食を準備し始めた、実際に全部を作ったのは晴夏だけど。陸翔は手伝たいとか言い出したら、彼女は前に真琴の誕生日会の出来事を思い出して、彼の好意を断った。不服そうな陸翔は仕方なく火起こしなどの雑用に任された。


ようやくすべての料理が出そろった時、陸翔は感嘆した。陸翔はやっぱり晴夏が料理上手だな、こんな腕前があるなら、毎日彼女の手料理を食べられたらどんなに幸せだと思った。陸翔の称賛を受けた晴夏はちょっと気恥ずかしく感じたけど、彼が美味しそうに料理を堪能した姿を見て、晴夏も満足気に微笑んでいた。


陸翔のために作った小さなモンブランケーキは甘味を抑えたバージョンだった。彼は普段甘いものをあまり好きじゃないけど、晴夏とデートする時、デザートが出された時は一口ぐらいを試食するぐらい。しかし、晴夏の手作りのデザートなら、必ず残さずすべてを食べた。それで、晴夏は二人用よりちょっと小さめのケーキを作った。


一旦片付けが終わって、二人は暖かいお茶を飲みながら話をした。


「晴夏、ありがとう。こんなに沢山の美味しいものを用意してくれて。」

「どういたしまして!」


二人は笑顔でお互いを見つめた。陸翔はいきなり晴夏の顔に近づき、彼女の唇を奪った。しばらくして、陸翔はようやく彼女を離した。「突撃」を受けた晴夏は頬と耳が赤くなった。


「ちょっと、いきなり何で…」

「可愛いだから、キスしたくなった。」

「だから、こういう恥ずかしいセリフを言わないでよ。」

「好きだからそのまま言って、別に悪いじゃないけど。」

「言い方の問題よ、あんたはチャラい!」

「じゃ、どういうふうに言われたい?」

「だから、そういうことはすらすら言わないでよ。」


陸翔は両手で晴夏の肩を持って、彼女を自分の方に向かせた。


「もういい加減慣れよ。恋人同士はこういうことを言うのは普通だからさ。」

「私の普通はそうじゃないから。だって、初めて誰かと付き合ってるからさあ。あんたみたいに経験豊富じゃないよ。」

「経験豊富って、ただ高校時代の二人がいただけ。」

「私は0人だけど。告白してきた人を全部断ったし。だから、こういう時どう反応するか分からないから、困るんだよ。」

「素直に受け止めればいいじゃん。」

「いつもドキドキの感じで心臓に悪いよ。いつ襲われて来たかびくびくするから。」

「本当に、お前はロマンティックとは程遠いなあ。」

「甘いセリフを書けるだけど、実践は別だ。」

「じゃあ、これから学べばいい。俺から恋愛のやりかたを。」


そう言い終わった陸翔はまた晴夏にキスした、しかも前回より長く深く。抗議したいと思って、陸翔から離れたい晴夏は到底彼の力に敵わなかった。


「キスする時に許可はいらないからさ。もちろん、君から俺にキスしたい時はいつでもOKだ。」

「誰がそんなことするか!」

「俺とキスしたい人は山ほどいるんだけどなあ。」

「じゃ、その人たちとキスすれば。」

「本心?」

「どうぞ。」


陸翔は後ろから晴夏を抱きしめて、頭を彼女の肩に載せた。二人はこの体勢のまま焚火を見つめながら、何も言わなかった。


「なあ、晴夏。」

「何?」

「デビューの話だけど…」

「ご両親に相談した?」

「俺に好きにすればって。」

「いいじゃない、応援されたから。」

「晴夏はどう思う?」

「前に言ったじゃない?陸翔がそうしたいなら、応援する。」

「でも、本当にデビューしたら、外で自由にデートできないかもなあ。」

「そういうこと気にしてたの?」

「晴夏とこれからいろんなことがしたいさあ。例えば、海外旅行したいし、外食して、映画を見て、人目を気にせずあなたと手を繋いだり、ハグしたり、キスしたり…」

「でも、そんなことで迷ってはいけないよ。リクの演技をもっといろんな人に見せたいでしょう?だから、ここで立ち止まりなんかしないで、思うように進めばいい。」

「実はさあ、事務所から言われた。もしデビューしたら、女性関係みたいのことを気をつけなきゃとか。何だか、ファンたちに彼女がいることをバレないようにって。」

「まあ、それは分かる。だって、俳優とかアイドルとかはある意味ファンに夢を与える存在だから。しかも今のリクは若いファンから見ると、疑似彼氏みたいの存在になるじゃない?夢を壊すようなことはできないから。事務所としては、あなたを売り込むためにそういう制限をしないといけない。」

「それで平気だって言うの?だってもしずっとそう言われたら、晴夏の存在を隠さなきゃいけないだ。」

「表でどうなっても、あなたの気持ちが変わらないなら、それでいいよ。だって、恋愛は誰かに見せるためにするもんじゃない。私たちはお互いを愛していれば、それでいい。」

「俺と他の女とキスしてもいい?ラブシーンとかあったら?」

「あれは仕事だから、仕方ない。」

「嫉妬しないで見られるの、そういうシーン?」

「まあ、あれはフィクションだから、平気。」

「そんなに寛大なんだ、晴夏は。」

「プロ俳優の彼女をなるために、それぐらいの覚悟はできるから。今だって、うちの舞台に見に来てくれる客の中に、あなた目当ての女の子は沢山いるから。デビューしたら、そのスケールはただ拡大するだけ。」

「日本中をキャーキャーさせる俳優になったらどうする?」

「ハハハ、あんたの自信はどこから来たの?もし、あなたは日本中の女の子たちを魅了できるなら、どうぞご遠慮なく。」

「全然心配しないだ?晴夏の方はよっぽど自信があるんだ。」

「だって、実際リクに告白されたのは私だから。あなたを独占できるのも私だから。」

「おお、こういう自信満々の晴夏が好きね。」


陸翔は晴夏の頬にキスした。


「俺はさあ、やってみようと思う。」

「そうか、頑張ってね。」

「親父から一つの条件があった。ちゃんと大学から卒業すること、だから中退なんか許さないって。」

「まあ、親の金で大学を通えるだから、それにもしものことがあっても、大卒ならちゃんと再就職もできるし。でも、お父さんが心配していることは起きないでしょう。」

「何で?」

「だって、リクは絶対大物俳優になるから。そういう覚悟がないと、ちゃんと俳優業と学業の両立なんか出来ないよ。」

「だよなあ。」

「楽しみしているよ。桧垣陸翔の名前は全国の人が知る時。」

「そうなるまで、あなたの力が必要だ。」

「もちろん、サポートするよ。」

「ありがとう、晴夏。絶対一流俳優になるから。」

「じゃあ、私は一流作家になって、いつかリクのために最高の脚本を書いて、リクはそれで最優秀主演男優賞を取る。」

「そうなるといいなあ。」

「やってみよう~」


そう誓った二人は輝く星空の下に、深夜までこれからの夢とお互いへの愛を語り続けた。

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