第22話 いつも通り、同じようにじゃない
新学期の始まり、そして新しい季節がやって来た。
いろいろがあった夏休みが過ぎて、晴夏と真琴は自分たちの日常に戻った。授業、課題、部活、バイトなどに追われていたが、真琴にとってこの状況はいい方かもしれない。忙しい毎日のおかげで、大学生活はより充実になり、そして窪田とのことを考える時間も無くなった。
一方、晴夏は陸翔と付き合い始めてから、二人きりの時間が一気に増えた。別に二人の関係を隠すつもりはないけど、演劇部でお互いの立場から考えると、やっぱり秘密にした方がいいと決めた。恋人関係が公になったら、周りから陸翔は自分の実力で役を取ったではなく、晴夏との関係が原因だと思われしまう可能性が否定できない。しかし、陸翔は時々他人がいる時でも晴夏に友達以上のスキンシップをしてしまって、それで晴夏にとって非常に困った。特に陸翔の女性ファンが多いだし、その子たちの視線はすごく痛かった。
真琴に一人にさせたくないと思い、晴夏と陸翔の気遣いで彼女と一緒に食事をすることは多くなった。その気持ちにありがたいと思ったけど、真琴は二人の邪魔をしたくないと思って、時々一人で出かけることを選んだ。
真琴にとって一番つらい時は登山部に顔を出す日だった。幸い、二学期から登山パートナーを変更することによって、真琴は二年生の女子先輩と組むことになった。そのおかげで、窪田と二人きりにならなくて済んだ。正直、窪田の顔を見る度に、真琴は兵庫にいた時自分が浮かれていたことに恥ずかしく思った。てっきり窪田は自分にある程度の好意が持っていたのに、結局あんな形で断れてしまった。窪田は淡路島の旅行以来真琴との連絡が途絶えてしまったけど、部活の時無意識に真琴のことを気になっていた。自分から真琴の好意を拒んだのに、今更彼女に優しくしたら非常識だと思った。
夏休みがもうすぐ終わったごろ、登山部は神奈川県と静岡県の県境にある金時山を登山することになったが、真琴はその時出席しなかった。実家から行けばいいんだけど、彼女はその時まだ窪田と会う状態ではなかった。窪田は真琴が来ないかもしれないと想定したけど、実際に会えなかったと分かってかなりがっかりした。
そんな思いを抱えながら、登山部恒例の登山テストが茨城県の
初心者向けの
真琴がチャレンジしたいのは中級コースである
真琴の新パートナーは迎場コースを選びんだせいで、今回の登山は経験豊富な窪田と組むことになった。本当は窪田と関わりたくなかったけど、彼を避けるために違うコースを選ぶのも嫌なので、真琴は結局自分の選択を変えなかった。
2.8キロのコースを大体2時間で登頂できるが、高低差は約610メートルがあるので、慎重に進むことが大事だ。窪田の指示やサポートのおかげで無事に山頂にたどり着いたけど、真琴と窪田は必要以上にしゃべらなかった。全員が無事に女体山頂に着いた後ランチをして、その後一時間ほどの自由時間に入った。
山頂から秋の紅葉を見ながら、真琴は一人でベンチに座った。そしたら、後ろから誰か近づく音が聞こえて、真琴は振り返ってみると窪田がこっちへ歩いてきた。真琴の反対側に座り、一本のジュースを差し出した。
「よかったら飲んで。」
「結構です、さっき飲んでましたので。」
「まだ怒ったみたいだね。」
「先輩が私を怒らせるようなことをしたですか?そういう覚えはないですけど?」
「俺に怒っても、自分に八つ当たりするようなことをしないで欲しい。」
これを聞いた真琴はすぐに立ち上がって、窪田を冷たい表情を見せた。
「先輩はいったいどういうつもりですか?余計に優しくして、次に突き飛ばして、でまたその繰り返し。私は疲れました、もう二度とこういうふうにあなたの行動に振り回されたくありません。だから、私をほっといてくれませんか?」
「そうできるなら楽だけど。」
真琴はこの発言で怒りが強くなった。
「自分の行動をコントロールできないくせに、責任は他人に押し付けるようなことを言って、本当に最低です。失礼します。」
真琴はそう言い放った後、窪田をその場に残した。彼女が去っていく姿を見て、窪田は深いため息をついた。
淡路島の件で、窪田は真琴に対する気持ちを自覚したので、だからその場で彼女との可能性を断ち切るためにああいうことを言った。しかし、彼女の悲しむ表情が彼の頭から離れなかった。同情や罪悪感ではなく、彼女を傷つけたことによって自分の心も痛んだ。だけど、二股をかけるわけにはいかない、だって自分はまだ彼女がいたから。でも、今の関係を整理するまで待っててとかも言えなかった。
新学期に真琴と久しぶりに会った時、窪田は自分の気持ちを確信した。もう真琴に好きになってしまった。だけど、前の件であんなに彼女を傷付けたから、告白どころか和解すらもできなかった。
下山する時、真琴は窪田の前に歩き、顔すら合わせたくないぐらい嫌がっていたことは明白だった。まあ、仕方ないだろう、まさに自業自得だと窪田は思っていた。しかし、真琴の歩くスピードがどんどん速くなり、窪田は心配して後ろで必死について来た。
そしたら、真琴の足元にある石を踏み外し、転びそうになった時窪田はとっさに彼女を支えよとしたが、自分が滑って左腕がそばにある岩にぶつかってしまった。衝撃による痛みを感じた窪田の顔が歪んでいたが、彼は真琴の安否確認の方を優先した。ショックのあまりにすぐ反応できなかった真琴は、窪田がしたことをようやく気付き、慌てて登山部のメンバーを呼び、窪田の状況を確認した。幸い、登山口からそんなに遠くないので、登山部のメンバーたちは窪田を支え、何とか登山口までたどり着き、タクシーを呼んで窪田を一番近いの病院へ送った。真琴は窪田の荷物を持って、一緒に病院へ行った。
緊急救命センターのロビーで待っていた真琴と登山部の新部長は、窪田が治療室から出てくるのを待っていた。窪田のケガの状況は知らないけど、一人で歩くことができたが、腕が衝撃によりどんな状態になったかは知らなかった。でも、窪田の苦しいそうな顔を見て、真琴はとても心配した。自分のせいで窪田をケガさせたというのは不本意だった。いくら窪田が自分を振ったとは言え、彼に怒りをぶつかったとは言え、真琴の内心ではまだ窪田のことを気になっていた。だから、彼がケガをしたところを見て、自分の気持ちを抑えきれなかった。
ようやく治療室から出た窪田は看護師と話しながら、何かを渡された。部長と真琴はすぐ彼のところへ行って、状況を確認した。看護師さんからの話によると、幸い左腕の打撲傷は重症ではないが、これから一週間程度痛みが残りそうで、だから腕は自由に動けないかもしれない。渡されたのは処方箋なので、真琴はすぐにそれを取り薬局へ向かった。腕の打撲傷で痛みは結構あったが、真琴の反応を見た窪田は何だかうれしかった。
薬をもらい会計も済ませた後、部長はタクシーを手配し、真琴に窪田を家まで送って欲しいとお願いした。どうやら、部長はまだ保険の件や部員たちの連絡もあって同行することができなった。部長と別れた二人はタクシーに乗って東京へ帰るった。
帰りの途中はずっと沈黙したままだけど、真琴はようやく窪田に話をかけた。
「先輩、本当にすみませんでした。私のせいでケガをさせて…」
「パートナーを守るのは俺の役割だから、気にすることはない。それより、あなたは大丈夫?さっきすごく驚いたみたい。」
「もう落ち着きました、心配しないでください。」
「それならよかった。」
「さっき先輩はすごく苦しいそうに見えたから、すごく心配しました。」
「もう大丈夫、治療したし。一週間たったら、また元気になる。」
しかし、真琴はそれを聞いていきなり黙り込んだ。窪田は横にある真琴を見たら、彼女はうつ伏せのまま涙を流した。窪田は無言のまま自分の右手で彼女の左手を優しく握り締めた。窪田の手のぬくもりを感じていた真琴は、顔をあげて窪田と目が合った。何も言わなかったけど、二人の手は握り締めたままだった。
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