フォーリング・イン・ラブ Falling in Love 💕
第7話 御岳山での急接近
真琴の初登山は御岳山に決定された。
登山部は年内最低でも月一の頻度で登山することになったから、部員は少なくともそのうち4回参加しなければならなかった。この基準は自分の体力と経験によって合わせるシステムだから、上級者しか挑戦できない山岳の場合、初心者とあまり体力に自信ない部員は不参加してもOKだ。それと半年ごとに行われる体力と山登りのテストも行われるので、合格した部員はもっと難易度が高い山への挑戦が認められる。一般的に、一年生は大体初級の日帰り山登りをすることが多いだ。各学部の試験期間中では、こういう正式な登山アクティビティをほぼ計画しないのだが、各自に山登りへ行きたい部員はプライベートでやるのは自由なので、その場合は費用が自己負担になる。
登山に費やす費用は日帰りと泊まりによってかなり違っていた。東京から離れた山へ行くと、宿泊費と交通費などは部員から毎月払った部費で賄っていたが、日帰りの場合は一般的に交通費や食事代は自己負担になることが多いだ。
今回の場合、御岳山は東京都内の山なので、日帰り登山に当たった。それで、部員たちは自分で集合場所のケーブルカー御岳山駅に集まることになった。
真琴は集合時間までの15分前に到着したが、そこにいたのは窪田だけだった。あまりにも彼と二人きりでいたくなかったけど、向こうは彼女のことを気づいたので、彼女は仕方なく挨拶することに行った。
「おはようございます、窪田先輩。」
「おはよう。」
本当に素っ気ないない返事だね、しかも苗字さえも呼ばれなかった。失礼なやつだね、真琴はそう思った。
「いつからここにいたんですか?」
「5分前。」
「何でそんなに早く来たんですか?」
「別に理由なんかない。ただ早く着いただけだ。あいつらは多分時間ギリギリまでしか来ないから。座って待ってろ。」
「はい、ありがとうございます。」
二人はまた沈黙のまま、違う方向へ見ていた。世間話をするような人だと思わないし、それに自分からも窪田に話しかけたくないから、真琴は無理して会話をするともしなかった。一方の窪田も、まさか真琴がこんなに早く集合場所に来ていたとは想像もしなかったから、二人きりになるこの状況で何を話していいか分からなかった。
しばらくして、他の部員が次々と現れた。出発前に部長から今日のプランをみんなに説明した。
「今日の参加者は16人なので、二つのチームに分かれて行動し、そして一年生は自分の師匠と一緒にペアを組むこと。」
ええ、今日はまた窪田と行動しなければいけないの?真琴は思わず嫌そうな顔になったので、それは窪田が気づいた。彼もあまり乗り気がないと思って、内心はこう思った。
「こっちだって嫌だよ、あの小娘が足を引っ張らなければいいけど。」
部長は説明を続いた。
「で、これから山頂までの道は皆で一緒に行くつもりです。山頂にある
山頂にいる時間は30分以内にして、それから御岳ビジターセンターまで降りてから、二つのチームで行動する。
チームAはまず日の出山コースへ、チームBはロックガーデンコースへ行きます。それぞれの往復所要時間は大体2時間から2時間半までなので、それが終わったらまたビジターセンターで集まりランチを食べに行きます。その後30分程度の自由時間があるので、商店街でも行けます。
午後から、チームAはロックガーデンコースへ、チームBは日の出山コースへ行きます。各チームがそれを終わったら、またビジターセンターに戻り、人数と安全確認をしてからこの場で解散する。
今日の日程について質問がありますか?」
みんなは質問がないので、部長から各チームのメンバーを発表した。部長自身がチームAのリーダーに、副部長はチームBのリーダーになった。真琴は窪田と同じくチームBに入った。
御岳山山頂へ向かう道は部長が言っていたように、距離はそれほど長くないが、あの階段は本当に足腰にきついだった。だけど、窪田の鬼トレーニングのおかげで、真琴はかなり簡単にそれを登れた。窪田は真琴の師匠として、一緒に行動しなければいけないのに、真琴のことを気にせず自分で早く山頂まで行った。山頂に着いた真琴は、窪田のあの涼しい顔を見て腹立っていた。
そして、ビジターセンターへ戻ってロックガーデンコースへ向かった。沢沿いの約1.5キロのハイキングコースはまた距離的に短ったけど、平坦な道ではないので、足元を気を付けないといけなかった。様々な石の間に清流が流れていて、岩と緑の木々で作り出したヒーリング的な空間、そして上流では滝も見られるので、真琴はここの自然風景に心が奪われた。
だけど、いくつの沢を渡る時に、濡れていた踏み石を使わなければいけなかった。真琴は足を踏み外し転びそうになった時、後ろから誰かに抱き支えた。振り向いていたら、そこに窪田がいた。
「気をつけろって言っただろう。ケガしたら承知しないぞ。」
「ありがとうございます。」
真琴は自分の不注意で窪田に謝った。恥ずかしそうに彼から離れて、足元を気を付けながらまた歩き出した。さっきいきなり彼との接触で、真琴はドキッとした。窪田は確かに自分の前に歩いていたはずなのに、いったいいつから自分の後ろに回っていたの?まさか、彼女が転ぶことを想定したから、後ろについてそれを防げたかったの?まあ、向こうはただ自分のパートナーをケガさせたくないと思ったでしょう、別に自分のことを気にするじゃないと思った。
チームBは無事集合場所に戻り、すでに帰って来たチームAと合流し、予約していた飲食店でランチをした。ランチの最中、窪田は真琴の目の前に座っていたが、何も言わずにただごはんを食べいた。それが終わったら、彼はどこかへ行ってしまい、午後の集合時間になったら再び姿を見せた。
日の出山コースは難易度としてロックガーデンコースより高いだが、所要時間はそれより少なかった。木陰の山道を抜けて、急坂を登り切れば、山頂に到着できた。晴れた日なので、そこから東京都心や奥多摩の山々が見られるので、山頂の風景は最高だった。真琴は自分がやっと山登りができたことに感動して、風景を見ながら笑顔になっていた。だけど、彼女が知らないのは、近くに真琴の行動を観察していたのは窪田だった。
「なんだ、山頂についたからってそんなに感動するの?本当にガキだな。」
そう思っても、窪田が真琴を見る目がとてもやさしかった。だけど、彼も真琴もそのことを気づいていなかった。
窪田は真琴の方へ歩き出し、こう話した。
「写真撮る?初山頂での記念写真、撮ってあげるから。」
真琴は窪田の提案に驚いたが、自分のカメラを彼に差し出した。
「よろしくお願いします。」
何枚も撮った後、窪田は真琴にカメラを返そうと思った時、副部長が二人の元にやって来た。
「君たちも記念写真を撮ろう、師匠と弟子の一枚を。」
そういった副部長は窪田と真琴を促して、一緒に並べていた。
「もっと近くに寄って、収まらないよ。」
窪田は真琴の腕を掴んで、自分の方へ引き寄せた。それで副部長は満足しているように、シャッターを切った。
「よく出来ました。さあ、集合場所に戻ろう。」
副部長がチームメンバーを集まり、ビジターセンターへ歩き出した。その帰り道に、窪田と真琴は会話をしなかった。さっき、窪田に触られた腕の熱い感触はまだ残っていたように、真琴は思わず後ろから窪田の姿を何度も見ていた。
集合場所に全員の無事を確認して、現地解散ということで、みんなはケーブルカーで下山した。電車で帰るつもりだが、窪田は真琴に声をかけた。
「今から家に帰るの?」
「はい、そうです。」
「じゃあ、送るよ。」
「ええ、送るって?」
「その辺へ行くつもりだから。ついでに。」
「どうやって送るの?」
「友達から借りたバイクだけど。乗れる?それとも怖くて乗れない?」
挑発されたような言い方で、真琴は思わずこう言った。
「乗れます。お言葉に甘えて、送らせていただきます。」
「じゃ、駐車場まで行こう。」
真琴は窪田の後ろに乗ってから、すぐ後悔した。バイクを乗ることは初めて、それに男性と一緒に乗るのも初めて。自分の手をどこに掴めばいいか分からなくて、真琴は焦っていた。そういう動揺を見逃せなかった窪田は、彼女の手を自分の腰に回した。
「しっかり掴まないと落ちたら承知しないぞ。」
そう聞いた真琴は、窪田を掴む腕と手にさらに力に入った。それを感じた窪田はニヤニヤしていたが、真琴はそれを知らなかった。
一時間以上をかけて、ようやく真琴が住むところの駅前に到着した。バイクから降りた真琴の足に力が抜けたみたいにガタガタになった。どうやら、初バイク体験で本当に驚いた。
「送ってくれて、ありがとうございます。」
「じゃ、気を付けて帰ろう。」
「はい、先輩も気をつけてください。」
窪田は振り向かずに行ってしまったが、真琴はただその場に立ち尽くして彼の後姿を見ていた。
そして、いきなり誰かが真琴を後ろから抱き着いた。
「マコちゃん、さっきのは誰ですかね?」
抱き着いたのはさっきの一部始終を見ていた晴夏だった。
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