第5話 山登りの始まり
登山部に入った真琴は、初めて部員たちと会ったのは4月の歓迎会だった。
登山部の部員数は元々30人で、男子は20人、女子は10人がいた。学業や個人の都合で参加できない人が時々いるので、毎回の登山の参加者数は大体10数人程度で、大半は山登り経験が豊富の方だった。今年の新入りでは、真琴みたいの初心者は何人もいたので、すぐに登山を挑戦するというわけにもいかなかった。そういうわけで4月から各自のペアで基礎トレーニングをやって、5月に初登山をする予定になった。
歓迎会は大学の近くにあるイタリアンレストランでやっていた。真琴が到着した時、すでに何人の先輩と新入生が談笑していた。みんなに自己紹介を済ませてから、真琴は端の席に座った。
他の部員の到着を待っている間、真琴はすでにいた参加者を観察し始めた。社交的な部長は雰囲気を盛り上げるために話し続けいたが、副部長は適当に反応するだけで明らかに部長が言ってることに興味がなさそうだった。だけど、部長はそれを気づかずか、それとも気にすることもせず、ただみんなと親切に接していた。こういう性格の持ち主だからこそリーダーとしてふさわしいでしょうね、真琴はそう思った。自分にはああいうことを続けたら、多分倒れそうになるでしょう。
集合時間の7時になったら、ほぼ全員が到着したみたいで、部長は歓迎会の開始を宣言した。みんなは食事を始めようとする時、ある男はゆっくり店に入り、登山部がいたところを確認してからそこへ歩き出した。部長はその男を見つかり、大きな声で話した。
「窪田、お前さ、また遅刻したよ。」
「すみません、部長。さっき、教授に引き留められたから、どうしても抜け出せなかった。」
「連絡すればいいのに。」
「今度気を付けます。」
「まあ、座ろう。歓迎会が始まるから。」
「分かりました。」
男は真琴の向かい席に座った。二人の目が合った瞬間、真琴は「こんばんは」と挨拶したが、彼はただそれにうなずいて何も言ってこなかった。
真琴はこの男に対する第一印象は悪かった。まともに挨拶できない男って最低だ、何でそんなに偉そうにふるまっていただろう。感じ悪い。先輩とは言え、同じ人間として挨拶ぐらいできないの?
食事会を進めていたが、真琴は「窪田」という男と一言も喋らなかった。向こうは自分の携帯をいじってばかりなので、周りのことに興味ないというのは明白だった。だけど、先輩たちはその彼の行動にまるで気にしてないみたい、彼に話を振ることもなかった。
終盤になった時、部長からあることを発表した。
「ええ、そろそろ終わるところですけど、今から新人のバディ組み合わせを発表したいと思います。四年生は登山の準備と装備の手配をしなければならないので、一年生の面倒を見るのは三年生になります。今年の新入りは8人で、5人は登山経験ゼロというわけで、基礎トレーニングの方もバディ先輩にお任せします。では、各自にトレーニングの日程や必要な装備をそろうことなどで話し合う必要があるから、今日解散する前に必ず連絡先を交換してください。」
そしたら、部長は組み合わせを言い始めた。
「岸真琴さん、あなたのバディは法学部三年生の窪田慎也です。」
ええ、窪田って、さっき遅刻した窪田?あの失礼の俺様キャラなの?真琴は自分の耳を疑った。だけど、はっきり聞いたのは窪田の名前だった。
本当に運が悪いとした言えなかった。
だけど、この運命から逃げられないなら、真琴は仕方なく窪田に話をかけた。
「窪田先輩、よろしくお願いします。私は工学部建築学科一年の岸真琴です。」
「よろしく。ところで、登山経験ゼロなの?」
「はい、そうです。」
「じゃ、何で登山部?」
真琴はあまり本当の理由を言いたくなかった。何となく、窪田が必ず馬鹿にすると思ったから。適当に回答しようと思った。
「やったことないことをやりたいだけです。」
「登山をなめているか?」
「いいえ、とんでもございません。」
窪田は目の前にいる女を睨んだ。明らかに建前だな、こっちが遊ばれていたみたいだね。
「まあ、連絡先を交換しろ。明日が暇?」
「何時からですか?」
「5時。ランニングから始めるから。その後登山の装備を教えるから、自分で買いにいけばいい。」
「先輩はご一緒しないですか?」
「俺はバイトで忙しいし、今年も司法試験の予備試験もある。」
「司法試験って卒業してから受けるものではありませんか?」
「在学中予備試験が受けるから。」
「なるほど、勉強になります。」
「で、明日の5時は大丈夫?」
「大丈夫です。どこで待ち合わせしますか?」
「どこで住んでいる?」
「あの、どうしてそれを聞きたいですか?」
「あなたに興味ないから、うぬぼれするな。ただどの辺に住んでいるかを知ってから、トレーニングの場所を決めたいだけ。」
「すみません、そういう意味ではありませんが、ただ初対面の人に自分の住所を明かすにはいけないと思いますだけ。ああ、住所ですね、学校の近くにあるXXXです。」
「じゃ、その辺にある公園で待ち合わせする。」
「分かりました、明日会いましょう、窪田先輩。」
窪田はこの岸真琴のわざとらしい話し方にすごく気に入らなかった。
「まあ、待ってろよ、この生意気やつに俺の怖さを教えてやる。」
真琴はわざと敬語で嫌味たっぷりの話し方を使って窪田と話をした。一般的に、真琴は初対面の人にいい印象を持たなくてもこういうこともやらないけど、窪田はあまりにも失礼だから、思わずそうしたかった。もちろん、彼は必ず根に持てると思うから、真琴は珍しく闘争心が湧いてきて、どんなことがあっても必ず窪田に反撃すると思った。
案の定、二人の戦いは基礎トレーニングから始まった。
窪田は真琴にまず公園で5キロを走られと言った。だけど、彼は知らなかったのは、真琴は長距離走に得意だったこと。高校時代では、晴夏は短距離走に得意なので、スピードが速い方だった。その反面、真琴は長距離走が専門で、半マラソンを完成したこともあったから、5キロって楽勝としか言えなかった。短時間でその過酷のはずの5キロを完走したので、窪田のあの驚いた顔を見た真琴は内心で笑い出した。
だけど、窪田もただものじゃなかった。それからのトレーニングでさらにきつい課題を真琴に与え、極限まで押したいみたいの勢いだった。真琴は負けず嫌いだし根性もあるので、どうして彼に負けたくなかった。そういう真琴を見た窪田は、だんだん彼女の努力や根性に感心した。
窪田は本当に自分が言ったようにとても忙しいだった。だけど、限られた時間をできるだけ作って、真琴のトレーニングを真剣に取り組んでいた。そして、周りから聞いた話では、窪田の目標は大学を卒業するまで司法試験を合格したいだそうで、だから三年生のうち予備試験をクリアしなければならなかった。一体、どうしてそんなに急ぐ必要があるの、真琴はその理由を知りたいけど、さすがに窪田には聞けなかった。
元々は一緒に来ないはずだけど、窪田が真琴と一緒に装備を買いに行った。理由として挙げられたのは、真琴は多分間違いのものを買うだろうって。だから、その買い物時間は真琴にとって苦痛の時としか思えないし、彼からの嫌がらせだと思った。登山の装備って結構あるから、そしてその中に値段がかなり高かったものもいくつがあった。この出費をどうしても抑えたいと思った真琴は、窪田に散々ダメ出しされて、もっといいものを買えば自分のためだって言い張った。この時点はまだ分からなかったが、彼が言っていたことが正論だった。あまり使いそうもないものは、山登りにどれだけ重要なのかって初心者の真琴はもちろん理解できなかった。後にそれを知った時、窪田に対する考え方も変わった。
そして、いろんな準備を整えたから、真琴の初登山の日がようやくやって来た。
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