第17話 地元冒険者に絡まれる
俺とユーリは、冒険者ギルドの中に入る。
酒場が併設されていた。
昼間だというのに酒を飲んでいる連中がいる。
ガラの悪い奴らだ。
俺は気にせず受付に向かった。
「おい。ここは素人のガキが来るところじゃないぜ」
酔っぱらいの一人に声をかけられた。
「忠告感謝するが、俺は冒険者だよ」
「お前みたいなガキが冒険者だと?」
「ほら」
俺は首から下げたプレートを見せた。
金属製のものだ。
「なんだ。Dランクか。素人同然じゃねえか」
「まあ、それもそうだな」
最初級はEランクだ。
Dランクといえば、それに毛が生えた程度のものである。
「なら、さっさと帰れ。ここはプロの世界だ。素人がしゃしゃり出る場所じゃねえ」
「その割には、昼間から飲んだくれているな。仕事はないのか?」
「うるせえ! テメエみたいなガキには関係ねえ! あんまりなめてると犯すぞボケが!!」
「やってみるか?」
「なん……だと?」
「俺を相手にすると痛い目を見ることになる。それでもいいのか?」
俺は毅然とそう言う。
「てめえ、俺様を誰だと思ってやがる?」
「知らん」
「俺を知らないとは言わせねえ。俺はCランクパーティー『鉄拳制裁』のリーダー、ガンツ・レッケンバッハだ!」
「ほう。Cランクパーティのリーダーか」
「おうよ! 今すぐ土下座すれば許してやるぞ?」
「断る」
「そうか。後悔しても知らねえぞ!!」
ガンツは拳を構える。
腰の剣は抜かないようだ。
舐められたものである。
それはそうとして、この町はずいぶんと治安が悪いな。
さっきのチンピラ……ええと、確かグリズリーだったか。
奴も食料目当てで襲いかかってきた。
この街は無法地帯だ。
自分の身は自分で守ろう。
俺はポケットに手を入れたまま、ガンツと向かい合う。
「やる気あんのかテメエ! 死ねやぁ!」
ブンッ!
繰り出されたパンチを軽くかわし、カウンターで腹パンをお見舞いした。
「ぐぼぉ!?」
体をくの字に曲げて、吹っ飛ぶガンツ。
そのまま壁に激突する。
ズドーンッ!!
壁が陥没するほどの威力だった。
「ごほっ!?」
血を吐いて床に倒れる。
ピクピク痙攣している。
死んではいないようだが、しばらく動けないだろう。
「お、お前……」
「ひぃーーーー!?」
周りの男たちが怯えて後ずさった。
「こいつ、やりやがった!!」
「Cランクのガンツがあっさりとやられるなんて!!」
「ちきしょう!!」
逃げようとする男ども。
だが、逃がさない。
「待て」
「ひぃーーーー!?」
「どこに行くつもりだ? まだ、話は終わっていない」
「も、もう勘弁してくれぇ」
男たちが涙目でそう言う。
「ダメだ。お前たちは全員、ここで死ぬ運命にある」
「そ、そんなぁ」
「死にたくねぇ!」
「助けてくれ!」
泣き叫ぶ男たち。
俺は容赦なく魔法を放つことにする。
「【ネコボルト】」
バリバリッ!
電撃が走り、全員が気絶する。
これでしばらくは目を覚まさないだろう。
「ふぅ。こんなものかな」
この冒険者ギルド内に、立っている者は俺以外にいない。
いや、二人だけいたか。
一人は、ユーリ。
そしてもう一人は、受付嬢である。
「…………」
彼女は唖然としていた。
口をポカンと開けている。
「おい、大丈夫か?」
「は、はい」
声を掛けると、我に返って返事をした。
「ここの冒険者ギルドはずいぶんとガラが悪いんだな。ギルドの監督不行き届きじゃないか?」
「いえ、その……」
「言い訳をするな。俺に何かあったら、どう責任を取るつもりだったんだ?」
「……申し訳ありません」
頭を下げる受付嬢。
「次からは気を付けるようにしろ。俺が相手だから大丈夫だったが、他の人間なら大変なことになっていたぞ?」
「はい。以後、注意します……」
「よし。では行くぞ」
「あの……」
「何だ?」
「ええっと、当ギルドに何かご用があって来られたのではないのですか?」
そう言えばそうだった。
今のところ俺がやったことと言えば、先輩のチンピラ冒険者を返り討ちにしただけである。
ここに来た本題を忘れていた。
「ああ、そうだった。隣の町から、食料を届ける依頼を受けたんだよ。それを届けて、受領印をもらうために来た」
「あ、そうでしたか。それで、食料はどちらに?」
「これだ」
アイテムボックスから、大量の食料を取り出す。
一度にカウンターの上に出すとあふれるので、一部だけを取り出した。
「うわっ!?」
驚く受付嬢。
「これはすごい量ですね……。これだけあれば、町の食料不足も少しは軽減されるでしょう」
「やはり食料不足は深刻なのか?」
「ええ。そちらで伸びているガンツさんも、普段は頼りになる実力者なのですよ? 空腹により不機嫌で、かつ戦闘能力も落ちていますが……」
「なるほど。まぁ、いいだろう」
スラム街で襲ってきたグリズリーとやらも、食うに困って襲ってきた感じだったな。
この世紀末感が漂う町の気配は、食料難によるものか。
受付嬢が依頼の達成処理を進めていく。
「…………おや? この依頼書には、もっと多くの量の食料が記載されていますが……。ただの誤字ですよね。アイテムボックスに入るような量じゃありませんし」
不思議そうな顔をする受付嬢。
「いや、その量で合っているよ。持ってきた食料はもっとある。ここでいいのであれば、出してしまうが」
俺としては、さっさと依頼を達成してスッキリしたいところだ。
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