9.三人の悪魔
「ソラト、もう泣くのはおやめなさい。僕とカイムさんを見てごらん。
君よりずっとずっと長生きだけれど、いまだに悪魔をしているではありませんか。」
そう、一角獣がいうと
「さよう。わがはいたちはもう、とうの昔に天へ帰ることを諦めてしまった。
しかし、あなたはまだ諦めていないのだ。
その点だけでも、わがはいたちより遥かに立派ではないか。
なあ、アムドゥシアス。」
と、カイムと呼ばれたツグミもうなずきました。
でも、ソラトと呼ばれた少女は、ふるふると、力なく頭を振っていいました。
「お二人は例え悪魔に堕とされている身であっても立派な方です。
カイムさまはその雄弁で名を馳せておられますし、アムドゥシアスさまは世に並ぶ者のない音楽家ではありませんか。
でも、わたしはだめな悪魔なのです。
天使にも戻れず、悪魔のままでもいられない、おろかでだめな悪魔なのです。」
うつむき、泣き続けるソラトをなぐさめながら、ツグミも一角獣も何度も顔を見合わせて、何度も口をそろえて繰り返しました。
「彼女のような清い心の持ち主が下界で涙を流しているというのに、天上では
見た目や素性ばかりを気にする阿呆どもがのさばっている。
なんとも理不尽なことではないか!!」
王さまは、その言葉を聞くとたまらなく悲しくなりました。
ソラトという悪魔は、王にも戻れず、鳥のままで生きていくことも出来ない自分と
同じだと思いました。
悲しくなった王さまは、頭をつばさに突っ込んで、静かに、しくしくと泣きました。
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