8.黒い城
王さまは、とてもとても不安になりました。
悪魔の城にたどり着けるかどうか、本当にあるのだろうか、たどり着いても悪魔はもとの姿に戻してくれないのではないか、そんなことを考えながら飛んでいた時よりも、ずっとずっと、心細くなりました。
でももう、引き返すような力はどこにもありません。
降り出した雪が、不安と心細さと一緒になってつばさと心にのしかかります。
王さまは『もういっそ飛ぶのはやめて落ちてしまおうか』とも考えましたが、勇気をふるってぐっとこらえ、静かにお城の前へとおり立ちました。
まるで大きな口のように、ぐわりと開いた門をくぐり、黒いお城の中へ入った王さまは、不思議なことに気がつきました。
外から見たときは不気味で恐ろしげに見えましたのに、実際に入ってみるとお城の中は明るくてぽかぽかと暖かく、とても僧侶たちのいう、恐ろしい悪魔が住んでいるようには見えないのです。
王さまは、ずっと飛び続けて疲れておりましたし、そのお城の暖かさも柔らかい毛布のように王さまの体を優しく包みこみましたので、少しだけ眠ることにしました。
しばらくして、目を覚ました王さまの耳にはどこからか話し声が聞こえていました。
それは、少女と二人の男の声で、泣いている少女を男たちが優しくなぐさめているようでした。
王さまがその声のするほうへと進んでいきますと、大きな扉に突き当たりました。
どうやら、話し声はその扉の向うから聞こえてくるようでしたので、王さまは扉を
少しだけ開けて中をのぞきました。
すると、そこには真っ白なドレスを着た白い少女と、バイオリンを持った一角獣。
そして、軍服を身につけて腰にサーベルをぶら下げた一羽のツグミがおりました。
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