7.北へ向かう鳥

小さな川と大きな河を七つと七つ、


小さな海と大きな海を七つと七つ、


小さな野原と大きな野原を七つと七つ、


小さな砂漠と大きな砂漠を七つと七つ越えました。



それでも、悪魔の住むという城はいっこうに見えてきません。

吹きつける北の空の風は冷たく、心も凍えてしまいそうです。

二人はだんだん不安になってきました。もしかしたら、あの老人も自分たちのことをだましたのかもしれない、そう思いました。


七日七晩飛んだ夜、大臣は悲しそうな声で


「王さま、もどりましょう。

もう、ここがなんという場所なのかすらわからないではありませんか。

わたしはもう死んでしまいそうです。

どうせ死ぬのであるなら、もとに戻れなくても、家に入れてもらえなくても、せめて、見知った土地で死にたいと思います。」


と、いいました。

その時、はるか遠くに大きな山が見えましたので、王さまは


「あの山まで飛んでみよう。

あの山を越えて何も見えなかったら、お前のいうとおり国に帰ろう。」


と、大臣をはげましました。

はばたくごとに重くなるつばさをふるい、はいずるように空をこぎ、やっとのことでその山を越えた時、はたして王さまの眼に真っ黒なお城が映りました。


「あれが、悪魔の住む城だろうか?」


そうふりかえった王さまの後には、今越えてきたばかりの山だけがありました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る