5.にせものの王さまと大臣

次の日、明るくなるのをまって大臣の家へとむかった二人は、自分たちの目を

疑いました。

なんと、大臣の家では大臣の家族と大臣が食事をしているではありませんか。

大臣は王さまと鳥になっているのですから、食事をしている大臣が本物であるはずがありません。

そのことに大臣の奥さんや子供たちは、まったく気がついていないようでした。

大臣は


「わたしはここだ!そこにいるわたしは、にせものだ!!」


と、さけびましたが、奥さんは


「うるさい鳥だこと。」


と、いって窓を閉めてしまいました。

すると、そのようすを見ていたにせものの大臣は、王さまたちの方を見て

『にっ』と笑いました。

大臣はその笑い方に見覚えがありました。


「魔法使い!魔法使いがわたしになってる!!」


しかたなく、二人は王さまの宮殿へと戻りましたが、そこでもやっぱり、王さまの

玉座には王さまがすわっておりますし、お妃さまも、お姫さまも、家来たちも、

何も気づいていないのでした。

そして、やっぱりにせものの王さまは二人の方を見て『にっ』と笑うのです。

そして、王さまを指差してこういいました。


「だれか、窓のところにいる鳥をつかまえろ。夕食のおかずにするから。」


王さまと大臣はびっくりして


「わしは王さまだ!」


「わたしは大臣だ!」


と、口々にさけびましたが、家来たちにはわからないようでした。

そのうち、弓を持ち出してくる者もありましたので、二人はそこから逃げなければ

なりませんでした。

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