#02
そして、彼女は、ゆっくり静かに淡々と続けた。
あたしと、これだけ戦えたのは貴方だけ。凄い。ねぇ、友達になってくれるかな?
どうやら彼女が言うには自分は世界から拒絶されており、同じ民族である仲間ですらも畏敬の念をもたれて避けられていたらしい。だからこそ友達という存在に憧れていて、俺を認めたからこそ友達になりたいと勇気を出したとの事だった。
その時、多分だが、俺の頬は緩み笑ったと思う。
そして、
……こう答えたよ。
男の世界では拳を交えたら、もう友達だ、とな。
無論、俺と彼女の死闘は拳を交えたなどという生やさしいものではなかったが、それでも俺には、もはや彼女が理解すべき強敵(とも)にしか思えなかったのだ。そして、仰向けに倒れたまま右手を差し出した。彼女は無言で右手を握ってくれた。
一生、友達でいようね。ズッ友っていうのかな?
ねぇ? いいよね?
彼女は満面の笑みを浮かべて、この上ないほどまでに喜んでいた。
それだけ、長い間、ずっと独りぼっちで苦しんでいたのだという良い証拠だった。
俺は、その苦しみが少しだけでも和らぐならばと微笑み返したよ。
ああ、それでいい。
と……。
いや、今となっては、そんな無責任な事を答えた自分が恨めしい。
ズッ友。
一生、友達だょ。その言葉が妙にもの悲しいのだが、俺は約束を守ったつもりだ。
何故ならば、彼女を殺したのは俺だから。彼女の一生を閉じたのは俺だったのだから。その瞬間まで俺と彼女は友達であったのだから。そうだな。もし女の喜びというものが在るならば出来れば教えてやりたかった。単なる友ではなく彼女としてだ。
それも、もはや後の祭りでしかないのだが……。
俺が、彼女の命を刈り取ろうとした、その瞬間、彼女は柔らかく微笑み、言った。
キミに殺されるなら本望だよ。でも、もうすこしだけ、いいかな?
俺の双眼から、溢れそうなものを堪えて答える。
不覚にも命の灯火を消し去る手を止めてしまう。
そして、
ああ、あと少しだけならばな。
と答えた冒頭に繋がるわけだ。
彼女は嬉しいと微笑み続ける。
最後に言いたいの。聞いてね。
ああ、聞くよ。キミからの言葉ならば尚更にだ。
フフフ。やっぱり、キミは優しいね。あたしの友達だけはあるわ。
あたしは分かってるの。キミはキミだから、あたしを倒す(殺す)のは宿命だって。そうよ。キミがあたしを倒さなければ世界は平和にならない。いえ、あたしを殺さず、物理的には平和にしても、キミを信じる善良な民衆は決して納得しない。
もちろん、あたしが所属するこことて、あたしが死ななければ決して止まらない。
あたしが生きている以上、キミの国と争い続けるわ。分かってる。
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